長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
空室対策には、パートナーとなる管理会社の存在も重要です。
空室が長期化する理由には、「入居者が決まらない」と「退去が多い」の2つが挙げられますが、どちらについても、管理会社の対応が影響していることが多々あります。
『半年以上入居者が決まらないのに、対策も提案もなく、そのまま放っておかれている』
『担当者に連絡しても返信がなく、その後どうなっているのか報告もない』
空室が長期化し、弊社にご相談いただくオーナー様が、管理会社に対して不満を感じることは、共通しています。賃貸経営に大きな影響を及ぼす空室の長期化を、そのような対応で放置されていたら、不満に感じるのも当然です。
この様なご相談をいただいた場合、弊社では、依頼中の管理会社の募集活動が十分に行われているか、募集活動に漏れがないか、募集条件が適正かどうかといったことを調査し、レポートにまとめ、弊社ではどのような活動ができるか、また早期に満室にするために、どのような募集戦略を取っていくかを提案します。
提案に対しご納得いただいた上で、賃貸管理業務をご依頼いただくのが一般的な管理会社変更の流れですが、弊社で募集活動を開始する前に、従前の管理会社との管理業務委託契約を解約していただく必要があります。
この記事では、従前の管理会社との解約の手続きで発生した、信じられないトラブルについて解説しています。
管理会社に依頼する前に、この記事を読み、トラブル回避に役立ててください。
管理委託の形態には、一般管理業務委託契約と一括借上げ(サブリース)契約の2つがありますが、今回のケースでは、一般管理業務委託契約です。
この2つの契約形態の違いは、過去の記事をご参照ください。
- 業務委託なのに、解約できな管理業務委託契約も存在します。
- 契約期間内での解約を制限する条文があると、その期間内での管理解約は制限されます。
- 管理会社との契約前には、解約についての条項を確認することも大切です。
理業務委託契約が解約できない!?
今回の事例では、従前の管理会社との管理業務委託の形態は、業務委託契約です。
業務委託契約は、民法の委任契約にあたりますので、『各当事者は、いつでもその解除ができる。』と定められています。
いつでも解約となると、即日解約もOKということになります。
それでは管理業務にも支障をきたすことがあるため、ほとんどの契約書には、『解約』の条項に、一定の期間(3ヶ月程)を定めています。
これにより、オーナーは、解約の申し出から3ヶ月後に契約を解除することができます。
ですが、先日管理会社変更でご相談いただいたオーナーが締結した管理契約書には、解除条項にある文言があることで、解約に制限が掛けられてしまっていました。
それがこの一文です。
「本契約は、原則として契約期間内に解約できないものとする。但し、甲乙双方が合意した場合は、その限りではない。」
契約期間については、6カ月前までに書面による通知がなければ自動更新となっており、解約については上記の一文の他に、解約違約金等の記載はありませんでした。
まとめると次のようになります。
- 原則は契約期間内での解約は不可
- オーナーと管理会社の双方が合意した場合は、契約期間内での解約可
- 期間満了の6ヶ月前までに書面による通知がなければ自動更新
これでは、どんなに管理会社に不満があっても、管理会社が解約に同意しない場合は、契約期間内の解約は不可で、契約期間満了の6ヶ月前までに、解約の通知をうっかり忘れていた場合は、自動更新となるため、更に同じ期間、対応に不満のある管理会社に依頼し続けなければならないということになります。
こんな無理な話があるのかいということで、弊社の顧問弁護士に相談したところ、次の見解を得られました。
委任契約はたしかに解約自由が原則なのですが、委任者(オーナー)が解約権を放棄したと評価できる場合は、解約できない場合が「ありうる」とされています。
この条項は解約権を放棄したと評価される可能性が大いにありますので、自由に解約できる可能性が50%か、もしくは、オーナー様が不利なように思います。
『原則として、契約期間内に解約できないもの』とされている契約書に合意しているため、解約は『オーナーと管理会社が合意の上でなければ解約できない』と評価されるということです。
規模の大きい物件のため、管理会社としても解約は避けたいはずで、そう簡単に合意してくれるとは思えません。
予想通り、管理会社からの回答は、『次の更新までは解約は受け付けられない』でした。
自動更新された契約期間は、満了まで1年以上あります。それまで、この空室状況が続くのかと、オーナーはがっかりしていました。
管理会社変更までに6ヶ月以上!
空室に対して、具体的な提案も募集活動報告もない状況が続き、更に1年以上同じような状況が続くのかと思うと、落胆するのは当然です。
弁護士にも相談しながら、管理会社側とも交渉を重ねて、最終的には、話し合いにより、書面による解約通知を提出の上、契約期間満了を待たずに、6ヶ月後に解約することで、合意できました。
ただその間は、管理会社の対応も、以前にも増して消極的になり、入居者募集活動についても、どのように行っているのか、実際に行っているのかどうかも分からない状況が続きました。
『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』の施行により、オーナーは、管理を依頼する前に、管理会社から、業務内容の要点をまとめた重要事項の説明を受けることになりました。
解約についても重要事項に含まれていますので、事前に説明を受けますが、条項の内容と意味合いを理解できないまま契約締結をしてしまうと、後々のトラブルの原因となります。
『本契約は、原則として契約期間内に解約できないものとする。但し、甲乙双方が合意した場合は、その限りではない。』
もし、管理業務委託契約書の解約の条項に、この一文があった時は、担当者に確認し、場合によっては修正を依頼しましょう。
この事例は、名の知れた大企業のグループ会社の管理会社との間で起こったことです。
管理会社の善し悪しは、会社の規模だけでは図れません。
大きな会社だから変なことはしないだろうと思いこんで安心し、確認をせずに署名捺印をすることは、オーナーにも落ち度があったことになってしまします。
契約内容について不明な点があれば、事前に確認し合うことで、オーナーにとっても管理会社にとっても、緊張感のある良好な関係を築いていけるのではないでしょうか。
トラブルは事前に回避できれば、費用も時間も無駄にかけずに済みます。
知識を深めて、ご自身の所有物件の満室経営に役立てましょう。
サブリース契約でのトラブルの事例は、こちらをご参照ください。