最初にお話をいただいたのは、そろそろ夏も終わる9月のこと。
弊社のお客様であるオーナー様からの、「長期間空室で困っているオーナー友達がいるから相談に乗ってあげて」とのひと言がきっかけでした。
なんと、所有している8室ある一棟アパートのうち、半数の4室が1年間以上も空室であるとのこと。
入居募集や賃貸管理を任せているのは、その地域でも複数の店舗を持つ、大手の管理会社。
担当者の提案通りに、フリーレント1ヶ月やAD200%などの破格の条件を付けていったけれども、まったく状況は変わらず、そのうち担当者からの提案や状況報告の頻度も少なくなり、どうしてよいのか、対応策もわからないまま1年が過ぎていったそうです。
立地は、メジャーな路線・駅ではないものの、駅から徒歩10分圏内。物件は築4年で新しく、浴槽のないシャワーブースではあるものの、ロフト付きで天井が高く日当たりもよく、条件を聞くだけでは、なぜそんなにも空室が多く長期化しているのか、理由が思いつきませんでした。
物件の条件
・ローカル路線の駅であるが、徒歩10分圏内
・築4年
・ロフト付きのワンルーム
・浴槽なしのシャワーブース
相談当時の募集条件
・賃料は、特に相場から逸脱していない。
・礼金0、敷金0で、初期費用が少額で入居できる。
・フリーレント1ヶ月分あり。
・客付け不動産会社への広告費は200%と多め
こういう時は、まず現地を見て、自分の目で状況を確認し、原因を推測することが肝心です。
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実際に現地に訪れてみると、条件面だけの問題ではないことが分かった
内覧に訪れた方がどう感じるのか。
駅からの距離感、建物周辺や室内の雰囲気など、新居を探している人の視点を想定しながら、歩いてみると、図面やグーグルマップ、ポータルサイトではわからなかったことが、いろいろと見えてきます。
この現地調査でも、見えてくるものがありました。
駅からの道のりは平坦で、順路も分かりやすく、途中川沿いの開けた道もあり、駅に行くにも不便はなさそうですが、問題は、建物周りにありました。
アパートのエントランス前に壊れた業務用冷蔵庫がひとつ錆びたまま放置され、階段の下には、アクリルケースやテーブルなどの残置物。許可していない大型バイクも停めてあり、アパートの顔ともいえるエントランス部分の印象が、よくありませんでした。
掃除がなされていない共用廊下や階段には、苔や汚れが染みついていました。
さらに、問題は室内にも。
長期間空室で、内覧もなかったせいか、玄関を開けると、まず、長いこと換気していない空室独特の、もわっとした空気が襲ってきます。
電気は点かず、トイレの水は蒸発したままで、下水のにおいが部屋に漂い、ところどころに小さな虫の死骸が落ちていました。
これではせっかく内覧してもらっても、よい印象を与えることはできません。
「空室期間が長くなった時に調べること。」でも書きましたが、よい印象は、入居希望者だけでなく、お客さんを紹介してくれる客付け不動産会社にも持ってもらうべきです。
当時の状況では、客付け不動産会社も、『紹介しても決まらない物件』という印象を持っていたと思います。そうすると、必然的に内覧件数も減り、成約する機会を失っていくことになります。
『清潔感を出す』ことは、募集条件の見直しの前に改善すべきことと判断したため、オーナーと相談し、冷蔵庫、アクリルケース、テーブルといった残置物はすべて撤去し、電気の契約、室内清掃に加え、苔の生えていた共用廊下の特別清掃を行い、ネガティブ要素を一掃しました。
これで、内覧してもらっても、マイナスなイメージに引っ張られることなく、立地や入居条件で検討してもらえるようになります。
募集条件や方法に目が行きがちですが、それ以前に、お客さんや客付け不動産会社が、建物にいい印象を持ってもらうように、清潔にしておくことも大切です。
室内写真をきれいに撮り、他の不動産会社にも使ってもらい、ポータルサイトへの掲載を促す
同時に行ったのは、興味を持ってもらえるような写真を撮ることでした。文字情報に比べて写真は多くの情報を与えてくれますし、頭だけでなく心にも届けてくれます。
内覧したいな、案内したいなと思ってもらうには、室内の魅力が伝わる写真を掲載し、お客さんや客付け不動産会社に興味を持ってもらうことが大事です。
それまでの部分的にしか写っていなかった、こんな感じの募集広告用の写真も、
開放感が伝わる写真に変え、
また、多くのお客さんに物件情報を届けるため、客付け不動産会社からポータルサイトへの広告掲載も可能にしました。
アパート周りや共用廊下、室内を清潔にし、見栄えの良い写真を撮り、募集と内覧の準備ができましたので、やっと本格的な募集活動をスタートです。
業者回りも行って情報収集
地域の不動産会社回りは、訪問できる会社数が限られるので、広告の観点では効率的でも効果的でもありません。ただ、その時期の需要動向や、適正な募集条件について、肌感覚のヒアリングができるため、募集戦略を考える上では、効果的だと思います。
このアパートでは、最寄り駅と、近隣ターミナル駅の2ヶ所、約20社を回った結果、賃料水準は適正で、初期費用についても適正。フリーレントもAD200%もあり、ポジティブな意見が多く、1年間も空いているのか不思議なくらい、よい反応でした。
前管理会社との解約手続きの関係から、弊社で募集を開始できるのが12月1日から。
部屋探しが活発になり始める良い時期でしたので、オーナーとも相談し、賃料の減額はせず、ひとまず1ヶ月はこのまま進めて様子を見てみることにしました。
一つ工夫したのは、4部屋いっぺんに募集をするのではなく、決まりやすそうな2部屋を絞って公開したことです。これは、普段ご案内をする上で感じたことですが、同じアパート内で全体の半分の部屋がいっぺんに入居募集をすると、何か特別な事情あったのではないかと、マイナスな印象を持たれることがあります。
『半分空室って、なんとなく不安だからやめておこう』という、謂れのない不安感も排除するために、4部屋いっぺんに公開するのではなく、まずは決まりやすそうな2部屋に絞って募集を開始し、決まり次第順番に1部屋ずつ公開することにしました。
初の入居申し込みからドミノ式に決まる
年内は、『知ってもらう、見てもらう』をテーマに、不動産会社に図面をFAXするなど、広報活動に努め、ある程度の内覧数を得られました。オーナーに聞くと、今までで最も多い数だったそうです。
最初の申し込みは、年明けの7日。保証会社の審査も通り、契約が確定したので、もう1部屋を公開すると、18日に2件目、20日に3件目と立て続けに申し込みが入り、12月1日の募集開始から2ヶ月で、3部屋決めることができました。残りの空室は1部屋。
思いのほか早く3部屋が決まったため、今後の募集の参考に、最後の1部屋はADを200%から100%に変更して、反響を確かめることに。
2月9日に最後の1部屋の申し込みがあり、結果としては、12月1日の募集開始から1月末までの2ヶ月で3部屋。その後半月で最後の1部屋が決まり、1年以上空室だった4部屋を、同じ条件で(1部屋は広告費を下げて)、3ヶ月以内に満室にできました。
まとめ
繁忙期に差し掛かる時期に募集を始められたという幸運もあったかと思いますが、『建物周りの見た目を良くし、室内を清潔にし、きれいな写真を撮ったこと』と、『他社にも積極的に広告してもらえたこと』が、大きく影響したのではないかと考えています。
また、提案したことを、すぐに実行してくれたオーナーの決断も、募集活動に良い影響を与えてくれました。
余程のことが無い限り、空室が長期化するということはありません。どんな物件にも、数の差はあれ、一定の入居ニーズはあります。
もし、空室が長期化しているようであれば、募集条件を調べ、建物周りや室内を清潔にし、きれいな写真を撮って、広く告知をしてみてください。何かしらの変化があるはずです。
ご自身でやってみるのが難しい場合は、ご遠慮なくお問い合わせください。
空室が長期化して悩んでいるオーナー向けに、無料の簡易診断を行っております。
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1976年生まれ、東京生まれ東京育ちで2人の娘の父です。長く賃貸管理の現場を経験してきました。その経験をこのサイトでお伝えしていきますので、皆様の賃貸経営にお役立ていただけましたら幸いです。
【保有資格】CPM(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/管理業務主任者/相続アドバイザー