賃貸オーナーにとって、管理会社の選び方を知ることは、とても重要な事です。
入居者募集力に自信があり、オーナーと同じ方向を向いて管理業務を遂行し、オーナーにとって最良の提案をしてくれる管理会社とパートナーシップを築ければ、安心して安定した賃貸経営を行い、資産価値を向上させることも難しくはありません。
反面、そうでない管理会社に委託をすると、無駄な不安やストレスを抱えるだけでなく、資産価値も落としてしまうことにもなりかねません。
ただ、そうはいっても、管理会社は、実際に依頼してみないと分からないことも多く、知識がないと善し悪しの判別ができないこともあります。
先の記事では、入居者募集力について確認したい内容、「賃貸管理会社に依頼する前に確認したい、賃貸管理会社の入居者募集力の見極め方」について紹介しました。
今回の記事では、管理業務や管理業務委託契約の契約内容について、「こんな管理会社には任せていけない」、依頼前に確認しておきたいポイントをお伝えします。
何も調べずに賃貸管理会社を決めてしまったオーナーは、是非、業務を委託している管理会社について、この記事の内容を確認してみてください。
目次
解約できない条文が管理業務委託契約書にある
管理業務委託契約は、委任契約です。委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約(民法第643条)であり、各当事者がいつでもその解除をすることができる(民法651条)と定められています。
契約期間中であっても、いつでも解除できるのですが、業務委託契約の条文で、解約を制限することもできます。
一般的なものとしては、「3ヶ月前に通知をすること」もしくは「3ヶ月分の管理手数料を支払うこと」がありますが、中には、解約自体を制限する条文もあります。
それが、この一文です。
「本契約は、原則として契約期間内に解約できないものとする。但し、甲乙双方が合意した場合は、その限りではない。」
原則として、契約期間内での解約はできず、双方の合意した場合に限りできるというものです。
更に、「6カ月前までに書面による通知がなければ自動更新」とあり、期間満了の6ヶ月前に、書面により管理会社に解約の通知をしなければ、自動的に更新されてしまいます。
契約期間内の解約は合意がなければできず、契約期間満了による解約は、満了日の6カ月前までに書面による通知が必要で、それを忘れると、自動的に管理業務委託契約が更新されるということです。
管理会社の業務内容や対応に対して、どんなに不満があったとしても、最短でも6ヶ月は依頼し、管理手数料を支払はなければならないことになります。
弁護士に確認したところ、このケースでは、委任者が解約権を放棄したと評価される可能性が高いそうです。
管理会社の対応に満足している時は気にならないかもしれませんが、そうでない場合には、オーナーは、余計なストレスを抱えることになります。
そうならないためにも、管理業務委託契約書の内容は、事前にしっかりと確認するようにしましょう。
「原則として契約期間内に解約できない」というワードを見つけたら、要注意です。
管理業務委託契約を解約したら、保証会社の家賃保証契約も解除される
最近の賃貸借契約では、家賃滞納リスクを軽減するために、連帯保証人ではなく、家賃保証会社を利用することが増えています。
連帯保証人は、月日の経過によって支払い能力が下がることもあり、滞納時も督促を行わなければなりませんが、家賃保証会社はそうはならず、滞納時も連絡するだけで代位弁済してくれますので、滞納時に係るストレスや時間をおおいに軽減してくれる助かる存在です。
賃貸借契約の期間中は、保証会社が付いていてくれる。それだけで安心できます。
ただ、賃貸借契約の期間中でも、家賃保証委託契約が解約されてしまうことがあるのをご存知でしょうか。
それが、管理会社の変更です。
家賃保証会社との保証委託契約は、貸主と借主、保証会社との間で保証委託契約しますが、どこの保証会社を利用するかは大抵の場合、管理会社が選別しています。
本来の姿であれば、保証委託契約は賃貸借契約に紐づいているもので、途中で管理会社が変わっても保証委託契約はそのまま継続されるべきですが、大手管理会社の中では、保証会社との間でその管理会社に限定した家賃保証プランを用意し、管理業務委託契約の解約時には、保証委託契約も解約になるという仕組みを利用しているところもあります。
この場合、その管理会社との管理業務委託契約を解約すると、入居中の入居者との家賃保証委託契約も解約となってしまうため、オーナーにとっては、解約を躊躇う理由にもなります。
これも、オーナーの業務委託契約の解除を制限することになりますので、契約前には家賃保証会社と保証契約の内容についても確認するようにしましょう。
報告なく入居審査基準が緩く保証内容も薄い保証会社を利用する
家賃保証会社については、殆どの場合は管理会社が選別することは、前項で書いた通りです。
大抵の管理会社は、メインで利用する保証会社があり、そこで承認にならなかった場合に備えて、審査基準が緩い保証会社も利用しています。
審査基準が緩い保証会社は、独自の審査基準もあろうかと思いますが、「大丈夫かなぁ」という内容の方でも承認となることがあります。
家賃を保証してくれるのであれば、オーナーにとって滞納リスクは軽減されるので、「保証会社はどこでも良い」と考えがちですが、保証内容が薄くなっている場合があります。
内容に違いがみられるのは、更新料・短期解約違約金・原状回復費用の保証上限額です。
原状回復費用については、明渡後に原状回復費用の代位弁済を依頼する場合に、上限額を超えた分は、オーナーの持ち出しになります。賃料6万円で保証上限額が賃料の1ヶ月分と定められていた場合、保証上限額6万円を超えた分は、オーナーの負担となってしまいます。
ただ、折角入った申し込みを、厳しい審査によって逃してしまうのも、もったいなく感じます。
大切なのは、「オーナーが保証内容を把握しているかどうか」と「審査の段階で保証会社を変える場合に報告があるかどうか」です。
後に「え?全額保証会社が負担してくれるんじゃないの??」とならないよう、利用する保証会社の保証内容と、審査時に保証会社を変更する場合に、オーナーに連絡があるかどうかは、事前に確認しておくことをお勧めします。
「こんな管理会社には任せていけない」、依頼前に確認しておきたいポイントのまとめ
この記事では、管理会社との間で発生する契約関係に関することについて、任せてはいけない管理会社の特徴を3つ紹介しました。
最後に、3つのポイントをまとめましたので、管理会社選びの際にお役立てください。
- 解約できない条文が管理業務委託契約書にある
- 管理業務委託契約を解約したら、保証会社の家賃保証契約も解除される
- 報告なく入居審査基準が緩く保証内容も薄い保証会社を利用する
賃貸管理会社選びの際には、この3つを是非確認してみてください。
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1976年生まれ、東京生まれ東京育ちで2人の娘の父です。長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。
【保有資格】CPM(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/管理業務主任者/相続アドバイザー