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礼金ゼロ敷金ゼロにして入居者募集することについて

以前から礼金ゼロ敷金ゼロで入居ができることを押し出している賃貸アパートや賃貸マンションはありましたが、マンスリーマンションの台頭により、賃貸住宅、特に単身向け物件に対する入居者の概念が、「拠点となる住まいを借りる」から「場所を一時的に借りる」に移行しているように思います。

賃貸経営をサポートする賃貸管理会社としては、礼ゼロ敷ゼロで初期費用を抑え、「一時的に借りる」ニーズに対応することもひとつの選択肢として、オーナーに提案していかなければいけない時代ですので、メリットデメリットを入居者の視点、オーナーの視点から考えてみることにしました。

礼金ゼロ敷金ゼロのメリットとデメリット

礼金ゼロ敷金ゼロの貸主のメリット

礼金ゼロ敷金ゼロにするメリットは、特筆すべきことではありませんが、入居者にとって入居のハードルとなる初期費用が下がるため、入居してもらいやすくなることです。

賃貸の入居時は、不動産仲介会社に仲介手数料(契約によっては家賃の1ヶ月分相当額)、火災保険、保証会社への加入が必須の場合は保証会社の初回委託料(家賃等の半月分)、そして礼金と敷金がかかります。
礼金と敷金がそれぞれ1ヶ月分だとすると、入居者は入居時に家賃の3.5ヶ月分強を用意する必要があります。入居する前にすでに3.5ヶ月分の賃料が発生しているわけです。これが礼金ゼロ敷金ゼロの物件だと、1.5ヶ月分で済みますので、同じ条件の他の物件と迷っている場合は、迷わずに礼金ゼロ敷金ゼロの方に申し込むでしょう。

家賃を上げずに礼金ゼロ敷金ゼロに条件を変えるのであれば、ターゲットが広がるメリットがあります。

礼金ゼロ敷金ゼロの貸主のデメリット

礼金ゼロ敷金ゼロのデメリットは、これも特筆すべきことではありませんが、礼金がないことで、オーナーが仲介会社に報酬を支払う契約になっている場合には、手元の資金から支払わなくてはなりません。
また敷金がないことで、家賃滞納があった時や退去時に入居者負担の原状回復費用が発生した時の担保がなくなります。
家賃滞納や原状回復費用は、保証会社の補償範囲に含まれていれば、オーナーが直接出費を被る確率は低くなりますが、退去時に原状回復費用をきちんと払ってくれるのかどうかの不安と、払ってくれない場合は、保証会社の代位弁済の手続きが済むまでの間一時的に工事費用を立て替えることも考えなければなりません。

礼金ゼロ敷金ゼロにすることで、入居のハードルが下がりターゲットが広がるメリットは前述のとおりですが、それにより、支払い能力の低い入居者が入居してしまうというリスクも考えられます。

それに起因して、入居者の質が乱れ建物内の居住環境が悪くなることも考えられます。

礼金ゼロ敷金ゼロで家賃を上げた時の入居者の2年間の総支払額の比較

借主の視点と貸主の視点にたって、2年間の支払総額で比較してみました。

借主の視点で考えた時

例:礼金1ヶ月、敷金1ヶ月、家賃7万円の物件を、礼金0 敷金0、家賃7.5万円に変更した場合の2年間で入居者が支払う総額の比較

礼1、敷1 家賃7万円の場合
7万+7万+7万×24ヵ月=182万円

礼0 敷0、家賃7.5万円の場合
0+0+7.5万×24ヵ月=180万円

敷金は大抵戻ってくることを考えると、この差だとむしろ礼金と敷金を払うから家賃を下げてくれと言われそうな差ですね。3年以上住むなら家賃が安い方がいいですし、この賃料帯の物件であれば、入居者にとっては、礼金と敷金を1ヶ月ずつ払って家賃を安くしてもらう方がメリットはあるかもしれません。

貸主の視点で考えた時

逆に貸主側の視点では、礼金ゼロ敷金ゼロにして家賃を上げた方が、家賃収入は増えますし、売却を考えた時の資産価値も上がりますので、メリットがありそうです。

仮にキャップレートが6%の地域だとすると、賃料が毎月5,000円上がることによって上昇する物件の価値は、5,000円×12ヶ月÷6%=1,000,000円となります。

単純計算で一部屋当たり100万円の価値が上昇するのであれば、貸主(オーナー)にとっては家賃を上げた方がメリットはありそうですね。

礼金ゼロ敷金ゼロをどのように活用するべきか

実体験として、地域や賃料帯によっては、礼ゼロ敷ゼロにすると、支払い能力に疑問符が付きそうな入居申し込みが増えますので、入居審査については注意した方が良いです。

保証会社をつければ大丈夫という意見もありますが、明け渡し手続きは、保証会社で費用負担をしてくれるとはいえ、時間もかかりますし、なるべくなら避けたい手続きです。

入居募集に苦戦している地域では、礼金ゼロ敷金ゼロはその条件が相場になってしまいますので、他に選択肢はありませんが、そうでない地域では、礼金ゼロ敷金ゼロにし、初期費用が安いという入居者へのメリットを打ち出しつつ、家賃を上げてみるといった、戦略的な入居募集の選択肢として活用してみるのもよいかもしれません。

また、物件の利回りを上げたいというオーナーにも効果的な方法の一つです。

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