長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
健全な賃貸経営の源とのなる家賃。賃貸経営の収入は家賃です。家賃が入ってこないと、支出ばかりで経営が成り立ちません。賃貸経営の一番大きなリスクでしょう。
家賃が入ってこない原因は2つ、空室と滞納です。
空室は、自助努力で解決できますが、解決できないのが滞納です。自助努力で解決できないと、他者の力を借りるしかありません。そこにはお金と時間がかかります。
収入が無いだけでなく、支出も増えるのが家賃滞納。
家賃滞納は、なぜ起きるのか、どう対処していけばよいのかを、実体験を振り返って、お伝えします。少しでも賃貸経営を行っている方々の参考となれば嬉しいです。
家賃滞納はなぜ起きるのか
誰しも、入居した時から滞納しようと考えているわけではありません。大抵は、入居して数年経ってから。(稀に、入居後数か月で滞る悪質な方はいます。)家賃が滞り始めるパターンをいくつか列挙しました。
- 転職や独立で勤務先が変わり、入居者の収入が変わった。
- 家族の介護や自身の病気・怪我などで、入居者の収支が変わった。
- 仕事が忙しくなり、振り込みを忘れた。
最初はうっかりでも、積み重ねで本格的な滞納に変わることもあります。
最近私が対応した件では、10年前に入居した3人家族の世帯で、6年前に管理替えによって、弊社での管理を開始したお部屋の入居者でした。それまで滞納歴はありませんでしたが、2年程前から、滞納しては入金するということを繰り返すようになり、状況を確認したところ、起業が上手くいかず、経済的に厳しくなったということでした。
入居当初は給与所得者であったお父様も、滞納が始まった時には年金生活に入り、奥様も病気がちで、代わりに返済する資力もないという状況です。連帯保証契約での長期入居者は、連帯保証人の高齢化も懸念点になります。
保証会社との連帯保証契約があれば、保証会社に代位弁済報告することで対処できますが、それがない場合、どのように対処すべきでしょうか。
初期滞納が起きた時の対処法
家賃は2ヶ月分滞ると払うのが困難になります。初期対応を間違えると、あっという間に家賃は積み重なりますので、早めに連絡を取ることが大事です。
青山物産では、2~3日の遅れで必ず連絡し、うっかりで忘れただけなのか、支払いが困難な経済的理由なのかを確認します。
うっかり忘れてしまった場合は、遅くても翌日までには入金するように伝え、期限内に入金がない場合は、入金があるまで繰り返します。
1週間を超えても入金がないようであれば、書面での督促や連帯保証人保証人への連絡を行います。
経済的理由である場合は、いつまでに入金が可能か、また、この状況が続くのか、改善されるのかを聞き取り、困難であれば転居を勧め、改善されるのであれば、改善案を確認し、合意書や覚書を締結しています。
併せて、連帯保証人にも連絡し、状況を共有するようにしておいた方が賢明です。
1ヶ月経っても入金が無い場合は、うっかりではありません。訴訟も見据えて、内容証明を送ることも検討しましょう。
- 2‐3日の遅れで電話連絡し、うっかりなのか、経済的理由なのかを見極める。
- 1週間を超えても連絡が無い場合は書面での督促や連帯保証人への連絡を行う。
- 1ヶ月の遅れでは、内容証明を送ることも検討
滞納が起きた時の対処法(建物明け渡し請求)
初期対応でも改善されず、滞納家賃が2ヶ月分になってしまった場合は、明け渡し請求の準備を始めます。
明け渡し請求は、ご自身で行うこともできますが、弁護士に依頼した方が賢明です。感情的になりやすい事案であるため、冷静に対応してくれる専門家に任せることで、オーナーが不利になるような行動をとるリスクを回避できます。弁護士は、管理会社の顧問弁護士が、管理会社経由でいままでの経緯を共有しやすいのでお勧めします。
明け渡し請求は、一般的には3ヵ月分の家賃滞納が確認できてからです。
当月分を前月28日迄としていた場合、5月分(4月28日迄)、6月分(5月28日迄)、7月分(6月28日迄)の3ヶ月分(期間は2か月間)の滞納からとなりますので、6月29日には行えます。
明け渡し請求の、手続きや進め方については、状況によって弁護士に確認した方が良いため、ここでは割愛します。
強制執行まで進んだ場合、明け渡し請求から約6か月はかかり、訴訟費用や強制執行の費用などの支出はありますが、その間の賃料収入はありません。また、明け渡し訴訟は、建物の明け渡しを強制的に執行するもので、滞納家賃の支払いについては別の扱いとなります。
支出があっても、滞納家賃の回収が定かではないため、オーナー様としては納得いかないこともあると思いますが、最低限の支出で抑えるためにも、早い段階で弁護士と相談し、いざという時に、早急に対応できるよう、準備しておくことが肝要です。
滞納はどうやって防げばよい?
これをやっておけば確実に滞納が防げるという方法はありません。ですが、実践することで、発生の確率を下げられ、実際に私も実践している方法をお伝えします。
保証会社との保証契約を促進する
今回のケースでは、管理替えにより、管理業務を引き継いだ物件で、以前の管理会社が保証契約を促進していなかったパターンでした。
滞納2~3日以内で入居者に連絡する
単に振り込みを忘れてしまったということもありますが、積み重なると支払いが困難になります。2ヶ月分の滞納は、一括で支払うことは困難であると考えた方がよいです。忘れたことから滞納になってしまうこともありますので、すぐに連絡することが大切です。
更新契約時に連絡先変更通知を送ってもらう
入居者や連帯保証人の勤務先や緊急連絡先を、新しい状態にアップデートしておくことは、いざという時にスムーズに対応できます。
家賃滞納の督促時に絶対にやってはいけないこと
感情的になりがちですが、家賃滞納の督促時には、以下のような行動をすると、オーナーが不利になることもあります。以下の行為は、絶対に行ってはいけません。
- 鍵をかけて、入居者を締め出す
- 家財を勝手に持ち出す
- 威圧的な態度を取ったり、脅迫ととられるような言動
- 入居者の勤務先に連絡
- 正当な理由なく朝9時前、夜8時以降の連絡
- 保証人以外に連絡
家賃滞納は、いくら予防対策をしていても、完全に防ぎきることは不可能です。あ、この入居者ちょっと危ないなと感じたら、先の手続きを見据えて、早めに弁護士(管理会社の顧問弁護士)に相談し、いざという時には、すぐに行動に移せるよう、情報を共有しておくとよいでしょう。
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