長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
自宅の売却手段のひとつとして、耳にするようになったリースバック契約。住み続けながら、マイホームを資金化できるため、検討する人も増えているようです。売り手側にとってメリット・デメリットそれぞれありますが、マイホームの売却手法のひとつとして、認知されていくのではないかと思います。
一方で、買い手側は、購入後にマイホームとしては利用できませんので、投資用不動産を購入する立場になります。購入後すぐに家賃収入を得られる点では、賃借人が既にいるオーナーチェンジ物件と同じで、収支計画も立てやすいという良さがあります。
売り手側がマイホームとして購入した物件ですので、主にファミリータイプの広めの物件となり、投資用不動産として主流の区分ワンルームと比較すると、高価格帯となりますが、空室になった時に、マイホーム購入者を対象に、高く売却できる可能性があるため、注目している不動産投資家も増えています。
「リースバック」で検索すると、関連する多くの記事が出てきますが、売り手の立場に立っている記事が多く、買い手にとって注意するポイントを解説する記事は少ないようです。
今回は、リースバック物件に、買い手としてかかわる際の注意点を紹介いたします。リースバック物件で不動産投資を検討している方は、参考にしてください。
- リースバック物件は、引き渡し後に売主が賃借人となる不動産投資
- 入居中の設備の不具合は、賃貸借契約の特約で借主負担とすることも可能
- 原状回復費用を借主にも負担してもらうには、原状を証明する写真を撮っておくとよい
リースバックとは?投資用不動産として購入することのメリット
リースバックとは、マイホームを第三者に売却した後も、引き続きその物件に賃借人として住み続けることができる仕組みです。マイホーム売却と同時に、買主を賃貸人、売主を賃借人とする賃貸借契約を締結します。
急に資金が必要になった場合や、老後資金を確保したい場合に利用されることが多く、売却後に家賃の支払い義務は発生しますが、売却益を得つつ、引っ越す必要もないため、住み慣れた場所で暮らし続けられるという、売主側のメリットがあります。
買主は、購入後に自分が住むことはできませんので、投資用不動産として購入することになります。売主が賃借人となる賃貸借契約を締結し、購入後にすぐに家賃収入が得られるという安心感があることは、オーナーチェンジ物件と同じですが、居住しているのが売主であることで、室内の状況を確認して購入することができるという、オーナーチェンジ物件にはない、良さがあります。
- 購入後すぐに家賃収入が得られ、退去の不安も少なく安定した家賃収入が得られる
- 売主が居住中のため、室内の状態を確認して購入できる
- 実需の空室物件として購入するより、安く購入できる可能性がある
- 退去後は、実需のファミリー物件として、購入価格より高く売却できる可能性がある
リースバックとオーナーチェンジの違い
買主の立場で見ると、リースバックとオーナーチェンジは、どちらも不動産投資です。大きな違いは、オーナーチェンジは、買主は、売主から賃貸人という立場と、入居者との賃貸借契約を引き継ぎますが、リースバックは、売主を賃借人とする新たな賃貸借契約を締結するという点です。
オーナーチェンジは、第三者である入居者が入居中のため、買主が室内を確認することはできませんが、リースバックは、売主が居住中のため、室内を確認することができます。
室内を確認できるということは、賃借人となる売主の物件の使い方や、室内の状態、劣化状況を把握できるため、所有してから発生する修繕費用を、事前に想定できるという良さがあります。
リースバックでトラブルになるポイント
売主にとっては、マイホームの所有権が買主に移り、自身は、売却後に賃借人として居住します。そのため、賃借人という立場になってからは、内装や設備を変えたり、途中でペットを飼育したり、利用方法や入居者を、自由に変えることはできません。
ですが、売主が、所有者として住んでいた時の感覚のままでいて、賃借人という立場に理解がないことで、トラブルとなることがあります。
所有権移転時には、同時に、賃貸借契約の締結も行います。買主は賃貸人の立場として、売主に、賃借人としての入居中のルールを説明し、理解してもらうようにしましょう。
入居中の修繕について
通常の賃貸借契約では、入居中の設備の修理や交換は、賃貸人の負担で行いますが、リースバックの場合は、買主が、所有権移転時の設備の損耗や劣化の状況を把握しきれないため、借主の負担とすることが多いようです。ただし、必ずそうなるわけではありません。
賃貸借契約では、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うのは賃貸人で、リースバック後に締結する賃貸借契約でも同様です。
入居中の修繕を借主の負担とする場合は、賃貸借契約書の特約に、「入居中の修繕は借主負担とする」旨の記載がないと、貸主の負担となりますので、注意してください。
また、所有権移転後も、売主所有のままとなる設備と、買主に所有権が移る設備を明らかにしておくことをお勧めします。
当社で購入した物件は、特約は入れず、引き渡し後に設備の不具合が発生した場合は、貸主である当社負担で修理・交換を行うことにしました。
引渡し前の故障・不具合は、売買契約締結時に売主から設備表によって申告がありますし、引き渡し後に発生した不具合は、通常のオーナーチェンジ物件と同じように対応したほうが、双方にとって納得できるやり方だと考えたからです。
オーナーチェンジ物件でも、引き渡し後に入居者に連絡した際に、設備の不具合について聞かされることがあります。前の管理会社には伝えていたのに、オーナーには伝わっておらず、修理もされずに引き渡しに至ったというケースです。
その点、リースバック物件は、売主=賃借人ですので、購入前にヒアリングもできますし、購入後すぐに修繕が必要となるようなことは少ないのではないかと思います。
退去時の原状回復費用の借主負担についてはどう判断する?
リースバック物件で、トラブルに発展しがちなのが、借主が退去した時の原状回復工事についてです。
リースバック物件の賃貸借契約では、入居中の修繕とは異なり、原状回復工事は、借主の負担としないとすること一般的とされています。これは、「原状」を証明することが難しく、明け渡し時に、借主の故意過失による損耗であることを証明することが難しいからです。
「原状」とは、賃貸借契約締結時の状態を指し、リースバック物件の「原状」とは、所有権が移転し、賃貸借契約を締結した時点の物件の状態を指します。
もし、一般的な賃貸借契約のように、借主の故意過失による損耗の原状回復費用を、借主にも負担してほしいのであれば、賃貸借契約締結時の物件の状態を写真で収めて残しておき、退去時の状態と比較できるようにしておくとよいでしょう。
オーナーチェンジ物件でも、売主から「原状」の写真が引き継がれず、「原状」を証明するすべがないことがよくあります。その場合は、借主の故意過失による損耗であることを証明できず、貸主負担になりますが、それに比べると、リースバック物件は事前に室内を確認できる分、買主は、「原状」の写真を撮っておいたり、原状回復費用を考慮した減額交渉を行ったりと、高額な修繕費用を負担するリスクを減らす努力をしやすいと言えるのではないでしょうか。
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