長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
あれは、新築一棟マンションでの出来事でした。
土地の購入から建物の建築までを、家賃収入の想定や募集方法と、綿密に収支計算から提案したオーナー様の物件です。
新築ですから、相場賃料よりも高めに設定したのですが、勢いよく2部屋が決まり、残り4部屋も上場企業の社宅契約で、決まるという上々の滑り出し。
時間をかけて家賃設定をしたものの、高めに設定している分、多少の不安を抱えたままの募集活動でしたが、スムーズに進み、一安心。
最初は、引っ越し後によくある、“友達呼んじゃって話し声がうるさいトラブル”だろうと思ったのに
事件が起きたのは、入居から1ヵ月たってからのこと。発端は、最上階の入居者から、隣が夜中までおしゃべりしていてうるさいとの苦情があったこと。
4部屋の社宅だったので、ひと部屋に集まって遅くまでおしゃべりしているのかなぁなんて思い、騒いでいるといわれた入居者に連絡を取り、入居者さんも否を認め、ひとまず解決。
と思ったのもつかの間。一週間後に同じ入居者から、また隣が夜中まで話しているとのクレームが。今回は隣だけでなく下階からも聞こえるとのこと。
こういう問題は、一度で改善されないことが多いのですが、放置しておくと、問題が大きくなり、退去にもつながります。それに、もし自分が入居者の立場だと考えたら、夜リラックスできない生活は嫌ですし、入居者に安心して住んでもらうのも管理会社の役割ですので、即刻注意するようにしています。
今回も2度目なので、少々厳しめに注意しに行きました。
意外な事実が発覚
「前回も注意しましたが、周りから夜中まで集団で話している声が響いてうるさいとの連絡がありました。共同住宅で、様々な生活スタイルの方がお住まいですので、夜はお静かにお願いします。」
ところが、
入居者「私たち、あれから一切集まって話していません。」
私「え? 本当ですか? 夜中まで話し声がって連絡があったのですが…」
入居者「会社からも言われていますし、集まる時は外で集まることにしました。」
私「はぁ そうですか・・・」
入居者「クレームって隣の人ですよね。」
私「いや、まぁ全体的に連絡がありまして…」
入居者「隣の方ですよね。実は私たちも最近怖くなってきたので連絡しようと思っていたところです。」
私「???」
入居者「前回注意されてから、毎日壁をドンドン叩いてくるんです。それに、誰かと電話しているようなんですが、私たちに聞こえるように大声なので、私たちのことを言っているのが全部聞こえてしまって。」
私「そうなんですか?」
入居者「私たちの出身地や仕事も知っているようで、それも怖くて。どこで知ったんだろうってみんなで話してたんです。管理会社さんから伝えたりしていませんよね。」
当然、管理会社から他の入居者の個人情報を伝えることはありませんので、
私「どういった方が住んでいるかは、性別や年齢も含め、弊社から他の方にお伝えすることはありません。」
それにしても、当初の問題からだいぶ広がってきた模様です。
事実関係が判然としないまま、どちらに一方的に肩入れすることは、余計にややこしくなりますので、一旦様子見とその間に状況証拠集めをすることにしました。とはいえ、夜中に私が立ち会うわけにもいかないので、入居者の協力が不可欠です。
入居者には早期に解決したいので、次に発生した際は、スマホで録音し、すぐに送ってもらうよう依頼し、同様に、先に連絡してきた入居者にも録音を依頼し、ひとまず様子を見ることにしました。
双方から送られてきたのがこちらです。
と、公開したいのはやまやまですが、個人情報もありますので、ここでは差し控えさせていただきます。
が、どちらの方が迷惑行為を行っているのかと判断するなら、当初電話をかけてきた被害者としていた入居者の方。
送られてきた音声データを聞くと、どうやら共用廊下で、誰かと電話で会話している様子。とても大きな声なので、明瞭に聞き取れました。
その内容がこちら。
「もう追い出されんね、あいつら、オーナーにも言ったし、あいつら追い出されるよ。私だってさぁ朝早いのに、キ〇ガイにさぁ大声で夜起こされて。・・・すげぇよ、もう駆けずり回ってんだもん。あっち行ったりこっち行ったり、普通の頭の持ち主じゃあやらないね。もうド田舎に戻って欲しいね。○○(加害者とされていた入居者の出身地)に!はははは」
「あたしの職業知らねぇからさぁ、ただの事務職なんじゃねぇぐらいに思ってんじゃねえの。私、○○(加害者とされていた入居者の職業)なんかよりさぁ、もっともっと社会的地位も認められている国家資格持っているもんね。○○なんかにバカにされる覚えねぇから。ふふん。」
本当に出身地と職業を知っている…。オーナーにも確認しましたが、個人的な情報は一切話していないとのこと。
これについては、実家から宅急便の伝票や、社宅の入居者同士の会話の中から得たのではないかと推測しました。
普通の考えでは及ばないことですが…
一方、当初連絡をしてきた被害者とされる入居者から送られてきた音声データは、他の方の音声はほとんど聞こえず、たまぁにちょっと聞こえると、その方の「うるせぇよ!」「廊下で騒ぐなよ、うるせぇな!」の声が。
証拠として相手の音声を録音しているのに、自分が怒鳴るという…
被害者が、実は加害者であったと分かった瞬間です。
新築で満室が、一転、4部屋一括退去に
この件は、契約企業でも問題になったようで、解決前に社宅契約解除となってしまいました。
入居からわずか4か月後のことです。
新築で募集して、勢いよく決まったと喜んだのも束の間。4ヶ月で4部屋一斉退去、新築プレミアもなくなるという状況に。
オーナーはローンも抱えているので、この状況はきついです。すぐに決めなくてはと、私も相当焦りました。
結果として、時間をおかずに4部屋決めることができ、問題の入居者は、何度もやり取りしたり、弊社の顧問弁護士から内容証明を送ったり、いろいろありましたが、なんとか退去してもらうことになりました。
現在は安定した運営を保てていますが、退去までには時間も労力も(精神的労力も)使い、騒音問題の対応の難しさについて考えさせられる一件でした。
実際こういったケースでは、裁判で争うとなると、信頼関係の破壊と判断されるまでには、ある程度の量の記録と証拠集めが必要で、時間がかかるものです。今回はそこまでには至りませんでしたので、スムーズに解決できた方です。
入居審査についても、滞納リスクの軽減に目が行きがちですが、今回のようなケースも念頭に置いて判断すべきだなぁなんて思いました。
ただ現実は、審査書類で判断するのは難しいので、定期借家契約で対応するのがベストなのでしょうか。
今回のケースの対処法
- 問題が発生したら、すぐに連絡を取る
- 一方の言い分をうのみにしない
- 問題点が明確になったら、毅然とした対応
- 録音やメモ等で、発生日や内容を記録
- 入居審査では完全に予防することは困難なので、定期借家契約も検討
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