長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
貸主と借主との間で揉めることが多いのが、退去時の敷金精算と原状回復の負担割合。
インターネットで『敷金/原状回復/トラブル』といったキーワードで検索してみると、多くの事例が出てきますし、賃貸経営で起こるトラブルの、大きな割合を占めるものです。
ひどいケースでは、訴訟にまで発展することもある、原状回復の負担区分。
ここでは、弊社の経験も踏まえて、トラブルを軽減するために、オーナー側で取っておくべき対応をお伝えします。
目次
原状回復でトラブルになる主な理由
トラブルになる主な理由は、『予想していた以上の費用を請求された』です。
『予想以上の請求額』には、単に『金額が高い』というのもあれば、『自身が負担すべきでない修繕について請求された』というのがあります。
どちらも、借主にとっては納得できないことであり、トラブルに発展する理由となります。
ガイドラインによる原状回復の負担区分のポイント
原状回復費用の賃貸人・賃借人それぞれの負担区分については、2020年4月施行の改正民法の条文で明文化されましたし、1998年3月に国土交通省から公表された、ガイドラインにもある通りです。
ポイントは以下の4つです。
- 借主は、建物を受け取った時後に生じた損傷は、受け取ったときの状態に戻して、貸主に返還する。
- 通常の使い方をしていて生じた損耗(通常損耗)や経年変化は、借主の原状回復義務の範囲外。
- 借主の故意や過失がある使い方によって発生した損耗等は借主の原状回復義務の範囲。
- 通常損耗や経年変化については、補修費を借主の負担とする特約は有効。
借主が建物を受け取ってから発生した損耗等は、借主の使い方が悪かったことで発生した内容については、修繕費用は借主負担となり、通常の使用方法によって生じた損耗や、経年劣化については、オーナーの負担となります。但し、通常損耗や経年劣化も、特約に定めておけば、借主の負担とすることができるということです。
ガイドラインに則っても起きた、原状回復トラブルについて
弊社で実際に経験した負担区分についてのトラブル事例を紹介します。
ガイドラインに照らし合わせても借主の負担であることは明白な損耗で、費用も特に高額ではなく、補修範囲もガイドラインに応じた範囲でしたが、納得いただけなかった例です。
ドアには大きな穴が開き、壁には血痕のような染み、浴室の棚にはアルコール系の液体のようなもので溶けた跡があり、借主負担の修繕費が敷金の範囲では収まらず、追加の支払いが発生することに、ご納得いただけない様子でした。
入居時に撮影しておいた室内状況写真と照らし合わせて、入居後にできた損耗であることを説明しても、納得できないご様子で、状況写真と見積書を持って、東京都の相談窓口で相談することを勧め、最終的には全額お支払いいただきました。
ガイドラインに則った負担区分であっても、トラブルになることもあります。大抵は解決することができましたが、非常に稀ですが、少額訴訟にまで発展した事例もありました。
トラブルを軽減・未然防止するためにオーナーや管理会社が行っておくべきこと
原状回復の負担区分によるトラブルは、借主が、『金額が高い』『自身が負担すべきでない修繕について請求された』と感じた時に起こりがちです。
これは、負担すべき修繕の範囲や額が、退去立会時に明らかになるという、退去立会の性質も要因のひとつです。
ですが、後日見積金額を提示し、敷金精算を進めるやり方は、退去後に連絡が取れなくなる借主もいることを考えると、オーナーにとっても不安が残りますし、回収リスクが上がります。
ではどうすればよいのでしょう。
弊社では、『借主にとって予想外でなくすること』と『原状を借主と共有しておくこと』が、効果的だと考えており、契約時に、退去時を見据えた手続きを取るようにしています。
具体的には、契約書類に原状回復の負担区分や、それに伴う金額を記載し、借主に内容を説明した上で、署名捺印してもらうことです。
クリーニング費用を例にとると、特約に『退去時のクリーニング費用は借主負担である』ことを記載するだけでなく、金額も明記し、同じようにトラブルになりやすいクロス張替えについても、どういう状況でクロスの張替えは借主負担になり、また、単価がいくらになるのかを明記しています。
これにより、借主にとっても『予想していた以上の費用』ではなくなりますし、契約時に退去時の最低限発生する費用を認識しておくことができます。
また、入居前の室内状況を撮影し保管したり、入居時に状況チェックシートを渡し、記入してもらうことで、退去時の状況との比較ができ、借主も負担区分が正当なものか、判断しやすくなります。
認識と状況の共有は、原状回復に限らず、トラブルの予防には効果的ですので、心がけたいことです。
- 負担区分や費用を、契約書に明記する。
- 原状の写真を撮っておき、状況チェックシートに記入してもらう。
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