長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
空室問題は、オーナーにとって賃貸経営状況に大きな影響を及ぼす、最大の悩み事。
この記事では、大手管理会社に依頼しながら、1年間空室率50%で放置されていた状態から、3ヶ月で満室にした事例をご紹介します。
空室問題を解決するためのヒントをいくつか紹介していますので、いま、空室問題にお悩みのオーナーは、この記事を読んで、満室経営にお役立てください。
最初にお会いしたのは、そろそろ夏も終わる9月のこと。弊社のお客様であるオーナーからの、「長期間空室で困っているオーナー仲間がいるから相談に乗ってあげて」とのひと言がきっかけでした。
なんと、所有している8室の一棟アパートのうち、半数の4室が1年間以上も空室であるとのこと。
入居募集や賃貸管理を依頼しているのは、その地域でも複数の店舗を持つ、大手の管理会社。
担当者の提案通りに、フリーレント1ヶ月やAD200%などの条件を付けたけれども、まったく状況は変わらず、そのうち担当者からの提案や状況報告の頻度も少なくなり、どうしてよいのか、対応策も立てられないまま1年が過ぎていったそうです。
立地は、メジャーな路線・駅ではないものの、最寄り駅からは平坦な道の徒歩10分圏内。物件は築4年で新しく、浴槽のないシャワーブースではあるものの、ロフト付きで洋室の天井は3メートル超と高く、日当たりもよく、条件を聞くだけでは、なぜそんなにも空室が多く長期化しているのか、理由が分かりませんでした。
物件の条件
・ローカル路線の駅であるが、徒歩10分圏内
・築4年
・ロフト付きのワンルーム
・浴槽なしのシャワーブース
相談当時の募集条件
・賃料は、特に相場から逸脱していない。
・礼金0、敷金0で、初期費用が少額で入居できる。
・フリーレント1ヶ月分あり。
・客付け不動産会社への広告費は200%と多め
募集条件に関しては特に大きな問題点が見当たりませんが、1年間も半数の部屋が空室というのには何かしら理由があるはずです。
私が、ご相談いただいてから、満室にするまでに行ったことを紹介いたします。
目次
実際に現地に訪れてみると、条件面だけの問題ではないことが分かった
こういう時は、まず現地を見て、自分の目で状況を確認し、原因を推測することが肝心です。
私が大切にしている視点は、『内見に訪れた方がどう感じるのか。』です。
駅からの距離感、建物周辺や室内の雰囲気など、新居を探している人の視点を想定しながら、歩いてみると、図面やグーグルマップ、ポータルサイトではわからなかったことが、いろいろと見えてきます。
この物件の現地調査でも、見えてくるものがいくつかありました。
駅からの道のりは平坦で、順路も分かりやすく、途中川沿いの開けた道もあり、女性が不安に感じるような薄暗い道もなく、駅に行くにも不便はなさそうです。駅前にはコンビニもあり、少し歩くとスーパーもあるため、周辺環境が空室に影響していることはなさそうです。
問題は、建物周りにありました。
建物周りに不法投棄された大きな残置物
エントランス前に壊れた業務用冷蔵庫がひとつ錆びたまま放置され、階段の下には、アクリルケースやテーブルなどの残置物。
許可していない大型バイクも停めてあり、アパートの顔ともいえるエントランス部分の印象が、よくありませんでした。
後日報告の際にオーナーに事情を聴くと、前の前の管理会社の時の入居者が置いて行ったものがそのままになっているとのこと。
当時の管理会社が、退去立会の際に入居者に確認せず、引き取らせることを怠ったようです。
清掃されていない共用部分
また、清掃がなされていない共用廊下や階段には、苔や汚れが染みついていて、不潔な印象です。これでは、内見に来た方も、マイナスな印象が残ってしまい、入居申込に積極的にはなれません。
また、美観が保たれていないということは、入居者の生活環境を損ねてしまっていることですので、更なる退去が発生することにも繋がります。
建物の美観を維持することは、入居募集によい影響を及ぼすだけでなく、無駄な退去を減らす効果も期待できますが、この物件では、それができていませんでした。
換気していない室内
問題は室内にもありました。
長期間空室で内覧もなかったせいか、玄関を開けると、まず、長いこと換気していない空室独特の、もわっとした空気が襲ってきます。
電気は点かずトイレの水は蒸発したままで、下水のにおいが部屋に漂い、ところどころに小さな虫の死骸が落ちていました。
管理会社が、空室時の室内状況の点検も行っていなかったことがうかがえます。
これではせっかく内覧してもらっても、よい印象を与えることはできません。
「空室期間が長くなった時に調べること」でも書きましたが、よい印象は、入居希望者だけでなく、お客さんを紹介してくれる客付け不動産会社にも持ってもらうべきです。
当時の状況では、客付け不動産会社も、『紹介しても決まらない物件』という印象を持っていたはずです。そうすると、必然的に内覧件数も減り、成約する機会を失っていくことになります。
満室に向けた改善箇所の提案
物件の現地調査によって分かったことは、物件に清潔感がないこと。
『清潔感を出す』ことは、募集条件の見直しの前に改善すべきことと判断し、残置物の業務用冷蔵庫、アクリルケース、テーブルの撤去と、共用廊下や階段の特別清掃。室内に関しては、電気の利用開始手続き、排水口への封水の注入、室内清掃を提案しました。
大型バイクは、調査の結果、近隣の方の所有物ということが分かりましたので、移動をお願いしました。
提案した内容のまとめ
- 残置物の撤去
- 共用廊下や階段の高圧洗浄を含む特別清掃を実施
- 室内の清掃と電気の利用開始手続き
これで、内覧してもらっても、マイナスなイメージに引っ張られることなく、立地や入居条件で検討してもらえるようになります。
空室が長引くと、募集条件や方法に目が行きがちですが、それ以前に、お客さんや客付け不動産会社が、アパートにいい印象を持ってもらうように、清潔にしておくことも大切です。
室内写真をきれいに撮り、他の不動産会社にも使ってもらい、ポータルサイトへの掲載を促す
同時に行ったのは、興味を持ってもらえるような写真を撮ることでした。文字情報に比べて写真は多くの情報を与えてくれますし、頭だけでなく心にも届けてくれます。
内覧したいな、案内したいなと思ってもらうには、室内の魅力が伝わる写真を掲載し、お客さまや客付け不動産会社に興味を持ってもらうことが大事です。
それまでの部分的にしか写っていなかった、こんな感じの募集広告用の写真も、
開放感が伝わる写真に変えました。
また、多くのお客さんに物件情報を届けるため、以前の管理会社では、「広告掲載不可」としていた条件を、「広告掲載可」とし、客付け不動産会社からのポータルサイトへの転載や、自社ホームページへの掲載も許可することにしました。
※広告掲載不可とは、管理会社が募集方法に制限を掛ける手法で、この場合、客付け不動産会社が自社ホームページやポータルサイトに掲載して募集活動を行うことができません。
アパート周りや共用廊下、室内を清潔にし、見栄えの良い写真を撮り、募集と内覧の準備ができましたので、やっと本格的な募集活動をスタートです。
業者回りも行って情報収集
地域の不動産会社回りは、訪問できる会社数が限られるので、広告の観点では効率的でも効果的でもありません。ただ、その時期の需要動向や、適正な募集条件について、肌感覚のヒアリングができるため、募集戦略を考える上では、効果的だと思います。
業者回りもの結果、入居条件は変更しないことに
このアパートでは、最寄り駅と、近隣ターミナル駅の2ヶ所、約20社を回った結果、賃料水準は適正で、初期費用についても適正。フリーレントもAD200%もあり、ポジティブな意見が多く、1年間も空いているのか不思議なくらい、よい反応でした。
前管理会社との解約手続きの関係から、弊社で募集を開始できるのが12月1日から。
部屋探しが活発になり始める良い時期でしたので、オーナーとも相談し、賃料の減額はせず、ひとまず1ヶ月はこのまま進めて様子を見てみることにしました。
4部屋いっぺんにではなく2部屋に絞り募集開始
一つ工夫したのは、4部屋いっぺんに募集をするのではなく、決まりやすそうな2部屋を絞って公開したことです。これは、普段ご案内をする上で感じたことですが、同じアパート内で全体の半分の部屋がいっぺんに入居募集をすると、何か特別な事情あったのではないかと、マイナスな印象を持たれることがあります。
『半分空室って、なんとなく不安だからやめておこう』という、謂れのない不安感も排除するために、4部屋いっぺんに公開するのではなく、まずは決まりやすそうな2部屋に絞って募集を開始し、決まり次第順番に1部屋ずつ公開することにしました。
初の入居申し込みからドミノ式に決まる
年内は、『知ってもらう、見てもらう』をテーマに、不動産会社に図面をFAXするなど、広報活動に努め、ある程度の内覧数を得られました。オーナーに聞くと、今までで最も多い数だったそうです。
最初の申し込みは、年明けの7日。保証会社の審査も通り、契約が確定したので、もう1部屋を公開すると、18日に2件目、20日に3件目と立て続けに申し込みが入り、12月1日の募集開始から2ヶ月で、3部屋決めることができました。残りの空室は1部屋。
思いのほか早く3部屋が決まったため、今後の募集の参考に、最後の1部屋はADを200%から100%に変更して、反響を確かめることに。
2月9日に最後の1部屋の申し込みがあり、結果として、12月1日の募集開始から1月末までの2ヶ月で3部屋。その後半月で最後の1部屋が決まり、1年以上空室だった4部屋を、同じ条件で(1部屋は広告費を下げて)、3ヶ月以内に満室にできました。
1年間空室率50%から3ヶ月で満室にできたことのまとめ
繁忙期に差し掛かる時期に募集を始められたという幸運もありましたが、やはり以下の4つ事が大きく影響したのではないかと思います。
満室に影響した4つのこと
- アパート周りの残置物を撤去し特別清掃を行い清潔感を出す
- 室内の電気を利用できるようにし、換気や清掃を行い清潔感を出す
- 外観・室内写真を、見栄えのよい写真に撮り直す
- 広告掲載可にして、他社にも積極的に宣伝してもらえたこと
また、費用が掛かることでも提案したことを、すぐに実行してくれたオーナーの決断も、募集活動に良い影響がありました。
余程のことが無い限り、空室が長期化するということはありません。
どんな物件にも、数の差はあれ、一定の入居ニーズはあります。
もし、空室が長期化しているようであれば、募集条件を調べ、建物周りや室内を清潔にし、きれいな写真を撮って、広く告知をしてみてください。何かしらの変化があるはずです。
ご自身でやってみるのが難しい場合は、ご遠慮なくお問い合わせください。
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