長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
入居者からの退去の連絡は、どれだけ経験を積んでも嫌なものですね。賃貸経営の収入源は、賃料です。退去によって一時的であっても家賃収入が途絶えるのは、喜ばしいことではありません。原状回復費用や入居者募集費用といった経費も掛かりますし、もし決まらなかったら・・・なんて不安もよぎります。
しかしながら、退去の意思を変えることは無理ですので、ここは「賃料を上げるチャンス」と、前向きにとらえ、次の募集に備えることをお勧めします。
この記事では、弊社で実践している、できるだけ高い賃料で、できるだけ早く次の入居者を決めるための、入居者募集のコツを紹介します。
賃貸オーナー様は、是非参考にしてください。
- 募集活動は解約届を受領した時から始まり、コンペア式家賃査定で3パターンの募集条件を設定しよう
- 魅力的な物件画像を使い、強気の募集条件から始め、反響を見ながら少しずつチューニングをすること
- 内見した方の感想や、近隣不動産会社回りで得られた感想や最新の動向を基に、変更条件を検討しよう
目次
解約届を受領した時から募集は始まる
『入居者募集は、解約届を受領した時から始まる』
弊社ではそのように考えています。
借主からの解約通知の期限は、契約内容にもよりますが、一般的には、解約希望日の1ヵ月前迄です。入居者募集から、次の入居者からの賃料が発生する契約開始までは、以下のような流れで進んでいきます。
- 家賃査定&募集条件決定
- 募集開始
- 反響状況確認
- 退去立会(この日から内見が可能)
- 原状回復工事
- 入居申込&入居審査
- 賃貸借契約締結
- 契約(入居)開始
賃貸借契約の開始日は、原状回復工事の完了日以降になります。原状回復工事は、室内クリーニングだけだとしても、1~2週間は掛かりますので、最短で契約開始日を設定しても、1~2週間の空室期間が発生します。
この空室期間を最短にするには、『退去立会の日までに入居審査が完了』し、『退去立会日から日を置かずに内見してもらい』、『原状回復工事期間中に、賃貸借契約を締結』し、『工事完了後、すぐに契約開始』という流れで進めなければなりません。

空室期間を最短にする理想の流れ
それには、解約届を受領してから、賃料が発生する退去立会の日までの1ヶ月間で、入居者募集をしっかり行うことが重要となり、『入居者募集は、解約届を受領した時から始まる』ということになるのです。
入居者募集を開始するには、まず、競合物件との比較や家賃査定を行い、募集条件を決めなければなりません。募集開始後は、問い合わせ数や内見希望者数等の反響状況を確認し、反響が少ないようであれば、賃料や礼金・敷金といった条件面のチューニングを、どのように行うかを判断していきます。
特に賃料を相場より高めに設定して募集する場合には、この反響確認とチューニングの作業が重要となり、反響の内容から、条件変更の内容とタイミングを決めていくことで、より高い賃料で早く決められることに繋がります。
以降の項目では、入居者募集に関する業務について、実際にどのように活動しているのか、詳しく解説していきます。
コンペア式家賃査定で、周辺の類似物件の入居者募集条件と比較する
入居募集は、募集条件を決めなければ、始められません。
賃料は、募集開始後に下げることは容易ですが、上げることは難しく、賃料上昇傾向にある最近では、相場にとらわれず、まずは強気の条件で募集を開始することをお勧めしています。
家賃査定では、周辺の類似物件の募集条件と比較し算出する方法が一般的です。家賃は、広さ・築年数・間取り・共用設備・付帯設備、方位、所在階といった、物件に関することや、礼金や敷金の額、AD(広告費)の額、ペット飼育・楽器利用・事務所利用可といった募集条件に関すること等、様々な要因に基づいて決まります。
相場と呼ばれる地域のおおよその賃料はありますが、「物件に関すること」「募集条件に関すること」の違いによって上下しますし、その時期に近隣で募集している物件との比較によっても上下します。
弊社の過去の事例では、設備が古い物件でも、周辺に3DK以上の間取りがないということで、相場より高く決まったこともあります。

AIを用いたコンペア式家賃査定
相場より高い賃料でも、その地域、その時期に、希少性が高ければ、入居者が決まることもあります。
家賃査定の際には、コンペア式家賃査定書で算出した後、SUUMOやアットホームといった不動産ポータルサイトでも、募集予定物件の条件で、検索してみるようにしています。検索結果で、競合する物件が少なければ、希少性が高い可能性もありますので、思い切って高めの賃料設定から募集を始めても良いのではないでしょうか。
募集条件を、高め(強気)、相場(標準)、割安(弱気)の3パターンに分けて想定する
家賃査定を行う場合には、強気・標準・弱気の3パターンを想定するようにしています。それぞれ、内見開始から約2週間の間に、凡そ何組の内見数を獲得できそうかで分けて考えています。2週間という期間を設けているのは、募集を開始してから伝達まで1週間、内見日程調整までに1週間。そして内見しやすい土日が2回あれば充分であるからです。
基準は以下の通りです。
強気では約1~3組。
標準では約4~6組
弱気では約7~10組
募集条件は、賃料や共益費だけでなく、礼金や敷金、客付け業者への広告費(AD)なども勘案します。近年は、家賃保証会社の保証内容も充実していますので、敷金を0とすることへのハードルも低くなり、パターンの調整もしやすくなりました。
不動産ポータルサイトで検索してみる
募集賃料や条件をある程度決めたら、最終決定の前に、不動産ポータルサイトで検索してみることをお勧めします。
募集する物件が、「60㎡・築20年・2LDK・徒歩8分のマンション」であれば、絞り込み条件は「55㎡~65㎡ 築30年以内 徒歩10分以内」というざっくりした条件で検索します。
ここではあえて賃料では絞り込みません。そうすることで、類似物件がどれくらいの賃料で募集しているかを見ることができます。検索した結果、査定の段階では強気だと思っていた賃料が、実はそうでもなかったということも珍しくありません。逆もまた然りで、弱気だと思っていたのが、高過ぎたということもあります。
類似物件が検索結果で出てこなければ、築年数や徒歩〇分の条件を外して検索してみるとよいでしょう。
ここで注意しておくことは、ポータルサイトに掲載している物件は、募集中の物件であって、成約した物件ではないということです。長期間決まっていない物件の可能性もあります。
家賃査定を補足する、参考資料として捉えるようにしましょう。
高めの募集条件で募集を開始&反響をチェックする
募集条件が決まったら、いよいよ募集開始です。解約届を受領してから募集開始までを、約2週間で行えれば、上出来です。
前の項でも述べた通り、一旦募集を開始すると、賃料を上げることは難しいため、高い賃料で決めるのであれば、強気の条件で始めましょう。但し、ただ高い賃料で募集するだけでは、効果は期待できません。弊社では、広告に使用する物件画像にも気を使います。
昨今では、入居者は、事前に物件写真をチェックして、内見するかどうかを判断します。「単に賃料の高い物件と判断されるか」、「高いけど内装が素敵だから見てみたいと判断されるか」は、使用する画像によって左右されます。物件写真の良し悪しは、内見数にも影響するため、高めの賃料設定で入居者募集をする場合、とても重要になります。

1年間空室だった一棟アパートで、弊社に管理移管後3ヶ月で満室にしたときに撮り直した室内画像
前回の募集時に魅力的な室内画像を撮影できていない場合には、室内画像は、保管してある中から厳選し、外観や共用部分の画像を撮り直しましょう。
ここからは、退去立会の日(内見可能になる日)までの約2週間で、どれくらいの反響が取れるかを確認していきます。反響には、「1.客付け業者からの物件確認」「2.入居希望者からの問い合わせ」「3.内見希望」の3種類あり、「3.内見希望」の数が多ければ、反響は上々といえますが、無くても焦る必要はありません。
退去立会後にすぐ内見できるようにし、内見した方の反応を聞き取りリストにまとめる
退去立会日を迎え、内見ができるようになってからが、本格的な募集活動の始まりです。
この日から内見できるように準備を進めておくと良いのですが、退去立会までは、室内の状況は不明です。退去後の室内の状態がひどければ、かえって悪影響となることもありますので、室内状況によって、すぐに内見可能とするのか、原状回復工事後に内見可能とするのがよいかを判断します。
既に内見希望があるのであれば、室内の状態を説明し、予定している原状回復工事の内容を伝え、内見してもらうようにすることも一案です。
内見した方には、必ず感想を聞き取ります。この感想は、今後の募集活動の方向性を決めるうえで、有益な情報となりますので、内装や賃料設定といった条件面の感想は、必ず質問しましょう。
内見・どういった方か・感想をリストにまとめておくようにしています。
近隣の不動産会社に、物件紹介訪問を行い、募集条件の感想と最新動向を確認する
内見が可能になってから、すぐに内見があり、そのまま申込という流れになるのが理想的ですが、賃料等を高めに設定していれば、そうはならないことが多いです。
その様な時でも、焦る必要はありません。高めなので当然と思い、次の手段を実行します。それが、近隣の不動産業者回りです。
近隣の不動産業者回りとは、物件のある地域や、同じ沿線の他駅、送客してくれそうな地域の不動産業者に、物件図面を持って、訪問することです。

物件紹介だけでなく情報収集にも効果的な近隣業者回り
物件の存在を認知してもらい、お客様に紹介してもらう目的と、その地域の最新の動向と照らし合わせて、募集条件がどのように捉えられているのかを把握する目的があります。
決まらない条件なのか、時期的にニーズが少ないだけなのか、次の項目で解説する募集条件のチューニングのために、できるだけ情報を集めるようにしています。
業者回りによって内見数が増え、入居に繋がったこともありますので、おろそかにはできない作業です。
反応が鈍ければ、条件をチューニングする
いままで解説した内容を実施し、それでも反響が少なければ、条件のチューニングを行います。チューニングを行うタイミングは、内見可能となった日から3週間程の内見数や反響によって決めるようにしています。内見数が0~3組程であれば早めに行った方がよいでしょう。
チューニングの際に役立つのが、内見した方からヒアリングした内容と、業者回りで得られた情報や感触です。賃料が高いという感想が多ければ賃料変更を、それ以外の要因によるのであれば、改善できるものは改善し、改善できなければ、賃料減額で対応します。
変更後の賃料等は、前の項目で解説した3段階の家賃査定の、強気と標準の間で設定します。その後は、2週間単位で反響確認とチューニングを繰り返していきます。そうすることで、高い賃料設定で早めに入居者を決めることが実現できます。
相場より高い賃料で早く決めるためのまとめ
相場より高い賃料で早く決めるために、弊社で実践していることを紹介しました。弊社では、これらのやり方で、過去何度も高い賃料での成約を実現してきましたので、再現性が高いやり方ではあるかと思いますが、不動産業者ではない賃貸オーナー様では、難しい部分もあるかと思います。そういう時は、懇意にしている不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
また、相場より高い賃料で募集をするのであれば、最低限必要な設備を整えておくことをお勧めします。というのも、そもそもニーズに合わない物件は、検討の対象外とされ、相場より安い賃料とすることでしか、比較対象の土俵に上がれないからです。
単身向けか世帯向けかによって、必要最低限設備として求められるものは異なるため、何が必須設備かは一概には言えませんが、類似物件で導入している設備を調べたり、不動産会社に相談するなどしたりするとよいでしょう。
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