長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
不動産投資を始めるには、当然ですが不動産を購入しなければなりませんが、投資用不動産は居住用不動産と違い、入居者がいるため室内の状況を確認できることは、ほぼありません。
賃借人がいる投資物件を、オーナーチェンジ物件といいますが、オーナーチェンジ物件は、賃借人がいることで、購入後すぐに家賃収入を得られるメリットがある一方で、購入前に室内を確認できない、入居者を選べないといったデメリットもあります。
この記事では、オーナーチェンジ物件を購入するときに、気を付けて確認しておきたいポイントをいくつか解説していきます。
- 投資用不動産を購入する前に、賃借人や物件について調べておきたい内容を紹介しています。
- オーナーチェンジ物件は、すぐに家賃収入があるが、入居者を選べないというリスクもある。
- オーナーチェンジ物件は、入居者の退去時に高額な修繕費用が掛かることもある。
目次
賃借人(入居者)について確認すること
不動産投資の収入源『賃料』を支払ってくれる、賃借人について調べることは、とても重要です。
賃借人については、『法人か個人か』『賃借人と入居者が同一か』『年齢や性別、勤務先』等ありますが、肝心の『安定した収入が得られるかどうか』という視点で考えると、必ず聞いておきたいポイントは3つです。
- 家賃滞納の履歴の有無
- 滞納時の家賃保証は、連帯保証人か家賃保証会社か
- 賃貸借契約期間(契約開始日や更新日の確認)
家賃滞納の履歴の有無
家賃滞納歴の有無は、ヒアリングの最重要事項です。
家賃保証会社を利用していない場合は、『滞納の発生=家賃収入ゼロ』を意味します。
区分マンションの場合、家賃滞納が発生している最中に、売却を行う売主はいないかと思いますが、一棟アパートやマンションの場合、複数ある住戸のうちの1部屋が滞納中ということもあります。
私の管理会社としての経験でも、滞納中の賃借人がいるオーナーチェンジ物件を購入したオーナーより、管理引き継ぎをご依頼いただいたこともありました。
収入が不安定で家賃が支払えないという方もいれば、逮捕拘留中で支払えないという方もいました。
家賃滞納中の賃借人がいるのであれば、どれくらいの期間滞納しているのか、また、賃借人への対応状況も聞いてみましょう。
過去に家賃滞納をしたことがある人は、今後も滞納する可能性がありますが、滞納に至った事情もあるかと思いますので、売主もしくは管理会社で把握しているようであれば、事情と、その後の支払い状況を聞いてみましょう。
『家賃滞納(歴)がある=購入物件として不適当』ではありません。
滞納家賃の回収や建物明渡に関する手続きに、費用が掛かってしまうことが問題なのです。
家賃保証会社を利用していれば、それを大きなリスクとして捉える必要はないかもしれませんし、明渡手続きがほぼ完了する段階であれば、賃借人の内容を改善する良い機会と捉えられるかもしれません。
そのリスクが許容できるのかどうか、また想定される費用を考慮すると、投資対象として適正なのかどうかも踏まえて、購入するかどうかの検討をお勧めします。
滞納時の家賃保証は、連帯保証人か家賃保証会社か
家賃保証会社も連帯保証人も、どちらも家賃滞納に備えるための存在です。
稀に、連帯保証人もおらず、家賃保証会社の利用もない賃貸借契約もありますので、必ず確認しましょう。
保証能力の持続性や回収のしやすさで比較すると、家賃保証会社利用の方が安心です。
連帯保証人は、契約時の保証能力が、契約期間中続くとも限りませんし、人によっては連絡が取れなかったり、対応してくれなかったり、回収に時間と手間、費用がかかることもあります。
過去の経験として、入居してから10年後に家賃滞納が発生したケースでは、連帯保証人もその期間で勤務先を退職し、滞納発生時には支払い能力がなくなってしまい、最終的に強制執行まで進みましたが、結局、滞納家賃は回収できなかったということがあります。
長く入居してくれることはありがたいことですが、賃借人も連帯保証人も、支払い能力が変化する可能性もでてきます。
その点、家賃保証会社は、代位弁済請求をすれば、直ぐに支払ってもらえますし、年数を経ることで支払い能力が低減するということもありません。
オーナーチェンジで物件は、賃貸借契約も引き継ぎます。
保証会社か連帯保証人かも、購入者の意思で簡単に変えることはできませんし、連帯保証人=滞納リスクが高いということではありません。重要なのは、契約者に滞納歴があるかどうか、これから滞納の可能性が高いかどうかですので、判断材料のひとつとして捉えると良いでしょう。
家賃保証会社は、賃貸借契約期間の途中からでも契約できます。
家賃保証会社利用でない場合には、購入後に賃借人に対し、保証会社の利用を提案してみるのもひとつの方法です。
保証会社利用であっても、管理会社を変更すると、家賃保証契約が解約となる契約もあります。このケースでそのままにしておくと、家賃保証会社も連帯保証人もない状態となってしまいます。
管理会社を変更する予定があれば、家賃保証契約も継続可能かどうかも確認しておくと良いでしょう。
賃貸借契約期間(契約開始日や更新日の確認)
入居日(契約開始日)と更新日の確認は、近々の退去の可能性(賃料収入の持続可能性)の確認です。
契約したばかり、更新したばかりでは、退去されてしまう可能性も低く、その先1~2年は予定している賃料収入を得られると考えても良さそうですが、契約満了日まで半年もない状況では、退去される可能性も考えておいた方が良さそうです。
契約満了日が近づいている場合には、入居者を募集する際の賃料や、入居者が決まるまでの空室期間も想定しておいた方が良いでしょう。
更新回数が多い長期入居者の場合、賃料が入居当時から変わっていないことがあります。
このような場合では、賃料が今の相場より安い場合も高い場合もあります。
物件価格は 年間賃料÷利回りで算出します。
賃料が安くなっている場合には、退去後に賃料を上げられれば、利回りアップが期待できますし、売却時の物件価格を上げられる可能性もあります。
賃料が高くなっている場合には、退去も想定し、相場賃料に引き直した場合、利回りや売却価格がどう変化するのか、シミュレーションを行っておくことをお勧めします。
物件の管理状況について確認すること
物件の管理状況について確認することは、管理運営費やメンテナンス費について把握しておくということです。
キャッシュフローツリーで見ると、Opexの部分に当たります。
賃料収入に大きな変化がない不動産投資では、支出をコントロールできるかどうかによって、収益力に差が出ます。
購入後に設備不良が重なり、修繕費用で大きな出費があったということも稀ではありません。
修繕履歴や、今後必要になりそうな修繕項目や費用については、しっかり把握し、シミュレーションしておきましょう。
Opexに当たる管理運営費については、区分マンションと、一棟アパート・マンションでは内容が異なりますので、それぞれの項目について解説します。
中古区分マンションをオーナーチェンジで購入するときの確認したい主な項目
区分マンションでは、マンション建物部分(共用部分)の修繕は、管理組合で実施し、費用は、区分所有者が毎月管理組合に支払う、修繕積立金を充当しますので、急に支出が膨らむということはありません。
しかし、長期修繕計画で定期的な増額が予定されていたり、マンション全体での積立金の不足が発生したりすると、修繕積立金の改定が検討されることがあります。
そういう事がないよう、購入前に『重要事項調査報告書』を取得し、管理費や修繕積立金の改定予定の有無や、管理組合で積立てられている修繕積立金の総額、過去の修繕履歴を確認することをお勧めします。
また、室内については、売主もオーナーチェンジで購入し、室内を一度も見たことがないとうことも珍しくありません。売主の把握している範囲で、過去の修繕履歴や設備の交換履歴を確認しましょう。
現地を見に行く際には、最低でも、外から確認できる給湯器の製造日やインターホンがTVモニター付かどうかは見ておきましょう。
- 管理費や修繕積立金の改定予定があるかどうか
- 修繕積立金の積立総額
- 大規模修繕工事の履歴や今後の予定
一棟アパート・マンションをオーナーチェンジで購入するときの確認したい主な項目
一棟物件は、区分マンションでは管理組合の修繕積立金で行っている、建物共用部の修繕もオーナーの負担で行うことになりますし、定期的に実施が必要な、法定点検や日常のメンテナンス業務といった項目も、オーナーの負担で行いますので、調査項目が多岐に渡ります。
室内の設備についても1戸単位ではさほど負担には感じなくても、複数戸で同時に交換が必要となると、負担は大きくなります。
屋根や外壁の補修履歴(特に防水関連)や、給湯器交換履歴などは、可能な限り売主に確認しましょう。
これらについては、現地調査で物件の状態を見ることで、ある程度推測できます。
購入後に、急に高額な修繕費用の負担が発生するということの無いよう、現地調査は必ず実施するようにしましょう。
また、一棟物件は、消防点検やエレベーター点検といった法定点検や、日常清掃等の維持管理に必要なメンテナンス費用についても、項目や費用を確認が必要です。
室内の設備については、区分マンションと同様に、把握できないケースが多いです。
ただ、こちらも現地調査によって、入居者の使用状況を推測することはできますし、間取りや居住年数によって、退去後に必要なリフォームについて推測することも可能です。
- 屋根や外壁といった共用部分の修繕履歴
- 必要な法定点検の内容とその費用
- 運営費用の内容や額
- 定期清掃等の定期メンテナンス費
- 室内の修繕履歴と今後必要になると予想するリフォーム内容について
まとめ
賃借人がいるオーナーチェンジ物件を買って不動産投資を始める時に、失敗するリスクをより低くするために、購入前に確認しておきたい項目をいくつか紹介しました。
投資用不動産は、購入後は売却するまで辞めることはできません。
ある程度のリスクは、購入前の調査によって把握することができます。
購入後に、「やっぱり購入しなければよかった」とならないよう、事前の調査を怠らずに、しっかり実施するようにしましょう。
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