長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
所有する賃貸アパートやマンションが古くなり、いままでの家賃で募集しても入居が決まりにくくなり、将来的な競争力や賃貸経営に不安を感じ始めているオーナーも多いと思います。
収益性の高い、安定した賃貸経営を行っていくには、高い入居率を維持していくことが大切ですが、建物や設備は毎年古くなり、そのままでは競争力が落ちていきます。競争力が落ち、家賃の下落や空室期間の長期化が続けば、安定した賃貸経営を行うことが難しくなります。
安定した賃貸経営を行うには、家賃の下落を抑え入居率を上げるための対策を講じる必要がありますが、それには、物件の競争力を高められるリフォームやリノベーションを行うことが効果的です。
今回の記事では、長期的に安定した賃貸経営を行うには、いつかは検討が必要になる、リフォーム・リノベーションの重要性や効果、費用分析の仕方について解説します。築古の賃貸物件を所有していて、今後の賃貸経営に不安を感じている賃貸オーナーは必読です。
- 賃貸経営を長期的に安定して行っていくには、リフォーム・リノベーションは空室対策として効果的
- リフォーム・リノベーションは空室対策だけでなく収益改善にも効果的
- リフォーム・リノベーションは設備投資であるため、費用対効果は投資分析で測定しよう
目次
空室対策としてのリフォーム・リノベーション
入居者が賃貸物件を決める際に影響するのが、「家賃」「内装(設備・間取含む)」「立地」「環境」の4つの要素ですが、オーナーの力で変えられるものは、「家賃」と「内装」の2つに限られ、空室対策として実施できるのも「家賃等の入居募集条件の変更」と「外観・内装の変更」です。
2つの空室対策のうち、費用を掛けずにすぐに実施できるのが、「家賃等の入居募集条件の変更」です。家賃には相場があり、相場より安い賃料設定にすることで、物件の競争力を高めることができます。
但し、安易に行うことはお勧めしません。一時的には入居が決まるかもしれませんが、長期的には「物件の競争力を下げる」ことに繋がる「賃貸経営の負のスパイラル」に陥る危険もあります。
「賃貸経営の負のスパイラル」とは、「入居が決まらない」→「家賃を下げる」→「収益が不安定になる」→「収入に対する維持管理費の比率が増加」→「維持管理費にお金を使えない」→「住環境が悪化」→「入居が決まらない」→「家賃を下げる」と、入居が決まらないことを理由に、空室を埋めるために家賃を下げることで陥る、賃貸経営の悪循環のことを言います。
このスパイラルに陥り長期化すると、抜け出すには多額の資金も必要になり、経営がより難しくなります。
一方で、リフォーム・リノベーションは、費用は掛かりますが、家賃水準を維持もしくは上げる効果や、ターゲットを広げる効果、物件の劣化を抑える効果もあり、長期的に物件の競争力を高めることができます。
賃貸経営の空室対策には、安易に家賃を下げるのではなく、長期的な視点で、リフォーム・リノベーションを検討し、物件の競争力を維持するため、もしくは競争力を上げるための設備投資を、しっかりと行っていくことが必要となります。
物件の競争力を維持もしくは上げるための設備投資は以下の通りです。
リフォームとリノベーションの違い
リフォームとリノベーションの違いについては、以前このブログ内の記事でも書きましたので、こちらもご参照ください。
賃貸アパート・マンションの室内をリノベーションしようと考えた時に知っておいて欲しいこと
明確な定義がなく、はっきりと区別することは難しいですが、「リフォーム」は、経年とともに汚れや傷が目立つようになった設備や故障した設備、陳腐化してしまった設備を交換し、機能を回復する工事であり、「リノベーション」は設備の交換だけでなく、間取りの変更や、壁や床材の素材の変更などを伴い、時代の新しい暮らし方に対応した内装に変え、機能回復だけでなく、性能や価値の再生・向上を目的として行う工事とされています。
リフォーム
→劣化や故障、陳腐化した設備を交換し、機能を回復する工事。リノベーション
→設備の交換だけでなく、間取り変更、水回りの位置変更、素材の変更なども行い、機能回復だけでなく性能や価値を再生・向上させる工事。
空室対策という視点でみると、リフォームは、賃料の下落を抑える工事。リノベーションは、賃料上昇やターゲット拡充が見込める工事です。
賃貸経営におけるリフォーム・リノベーションの効果
この項では、所有する賃貸アパートやマンションに、リフォーム・リノベーションを行うことで得られる効果について解説します。
リフォーム・リノベーション工事、特にリノベーション工事を行うと、家賃を上げても入居者が決まりやすくなる可能性が上がります。最近では賃貸物件探しにSNSを利用する人も増えており、内装が魅力的な物件には、エリアに関係なく集客力が向上する傾向があります。これにより、家賃収入の増加+空室率の減少といった効果を得ることができます。
また、メンテナンスコストを下げる効果も期待できます。一度交換した設備は、故障するリスクが減少します。
設備の性能は年を追うごとに向上しており、古くなった設備を交換することで、長期的にメンテナンスコストを下げ、収益性の向上に繋げられる可能性もあります。
これらは、「賃貸経営の負のスパイラル」が「正のスパイラル」に転換することを意味します。
正のスパイラルとは、「設備投資を行う」→「家賃を上げても入居が決まる」→「収益が安定する」→「収入に対する維持管理費の比率が減る」→「維持管理にお金を使える」→「住環境が良くなる」→「競争力が上がり入居が決まる」と、設備投資をすることで、空室が埋まりやすくなり、収益性も上がり、再投資するための資金ができ、更に収益性を上げるための再投資が可能となる、賃貸経営の好循環のことを言います。この循環に転換できると、長期的に安定した賃貸経営が可能となります。
賃貸経営で知っておきたいリフォーム・リノベーションの投資分析について
リフォームやリノベーションは、賃料を維持・上昇させる効果が期待できますが、多額の費用が必要な設備投資です。賃貸オーナーは、工事を実施する前に、その設備投資が、投資として効率がよいものかどうか、また、いくつかある設備投資の中で、費用対効果が高い投資はどれなのかを、検討し判断する必要があります。
この項目では、不動産の投資分析の指標をいくつか紹介します。投資分析は、主に建物を新築する際や、物件を購入する際に、投下資金の運用効率を測るために活用しますが、リフォーム・リノベーションを行う際の設備投資の分析にも活用できます。
指標はいくつかありますが、ここでは事例を基に、3つの指標に絞って紹介します。
事例
月額10万円の賃料収入が得られる賃貸マンションの1部屋を、200万円で内装のリノベーションを計画していたとします。
リノベーションの結果、賃料を月額15,000円上げることができそうだと判断します。このケースで、それぞれの指標を用いて投資分析を行ってみましょう。
1.投資回収期間(ペイバック)
投資額を何年で回収できるかという指標です。
200万円を投資して、年間18万円の収入増ですので、200万円÷18万円=11.11年。
200万円の回収期間は約11年です。
2.投下資本利回り
投資した200万円の運用利回りを評価するための指標です。
200万円の投資をして、18万円の収益が得られますので、18万円÷200万円×100=9%の利回りとなります。
最近の投資用不動産の運用利回りが、4~7%前後ということを考えると、利回り9%が期待できるのであれば、よい投資と判断できます。新規の投資先に投資するよりは、既存の物件を差別化し、家賃を上げるために投資する方が効率的と考えられます。
3.収益還元法(直接還元法)による不動産価格の算出
家賃の上昇によって、不動産価格がどれほど上昇するかを算出する指標です。
不動産価格は、1年間の収益を利回りで割ることで求められます。200万円掛けてリノベーションすることで、不動産価格がいくら上昇するかを求めることができます。
不動産価格=年間収益÷利回り
市場での不動産価格が300万円上昇したことになります。投資額は200万円ですので、この投資することで、100万円価値が増えたという計算になります。
投資分析の3つの指標について紹介しましたが、これらの指標は、単年での運用利回りを測る指標です。一定期間の利回りを測る指標や融資を受けた場合の指標もあります。ここでは紹介しませんが、複合的な視点で判断する場合には、このような指標も活用するとよいでしょう。
また、設備投資を行うかどうかを判断する際には、設備投資を何もしなかった場合には、家賃の下落や物件価格の下落もシミュレーションし、設備投資を行った場合のシミュレーションと比較し、検討することもお勧めします。
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