長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
2020年4月に改正された民法によって、賃貸借契約の連帯保証人に対しても、極度額を予め取り決め、契約書に明記することになりました。
ひとことで「極度額」といっても、貸主の立場では、より高い額に設定しておいた方が安心ですが、保証人の立場では、高額になればなるほど負担は増し、保証人になること躊躇してしまいます。実際には、借主の家賃滞納等がなければ、保証人に金銭的な負担が発生することはありませんが、そうはいっても精神的な負担は感じるはずです。
では、貸主にとっても保証人にとっても、お互いに納得できる?(貸主にとっては安心でき、連帯保証人にとっては、妥協できる?)極度額はいくらなのか。
今回は、平成30年3月30日に国土交通省より発表された『極度額に関する参考資料』を、参考としてみました。
この資料では、『家賃保証会社が代位弁済した滞納家賃等のうち、回収できなかった損害額』『家賃滞納発生から明渡訴訟に至る1,000件あたりの件数や平均的な期間、借主から回収できなかった金額等の管理会社に対する調査』『裁判所の判決において借主の未払金家賃を連帯保証人の負担として確定した額』の3つの視点から、家賃滞納が発生した場合に、貸主負担になる可能性が高い金額を調査したものです。
目次
『家賃保証会社が回収できなかった額』
国土交通省の家賃債務保証業者登録制度に登録している家賃保証会社に対して行ったアンケートです。保証会社が貸主に代位弁済した額から、借主から回収できた額を差し引いた、損害額として判断された金額です。
8つの賃料帯ごとに、まとめられていますが、その中の一部の賃料帯で見てみます。
8万円~12万円の賃料帯では、中央値:35.6万円、平均値:50万円、最高額:418.6万円
12万円~16万円の賃料帯では、中央値:49.9万円、平均値71.2万円、最高額369.3万円
16万円~20万円の賃料帯では、中央値:64.8万円、平均値97.3万円、最高額478.5万円
20万円~30万円の賃料帯では、中央値:85.8万円、平均値126.2万円、最高額606.8万円
中央値では概ね3~4ヶ月分、平均値では、概ね4~6ヶ月分のようです。回収できなかった金額ですので、回収能力によって差がでるかとは思います。
家賃保証会社がほぼ回収できなかったと仮定すると、3ヶ月分の滞納で明渡交渉を開始し、明渡訴訟で6ヶ月程かかるとすると、家賃滞納分だけで9ヶ月分。
『管理会社に聞いた、家賃滞納発生から明渡訴訟に至る1000件あたりの件数、平均的な期間、回収できなかった額』
公益社団法人日本賃貸住宅管理協会が会員企業に対して行った調査によって、家賃滞納が1,000件発生したと仮定した時に、『合意解約』または『強制執行による明渡』までに進んだ件数、未納家賃の平均期間を割り出した資料です。
それによると、
『合意解約により明渡完了』までは、発生率0.85%、滞納発生から平均4.5ヶ月かかり、平均未納家賃や4.1ヶ月分です。
『強制執行』となると、発生率0.08%、滞納発生から平均9.1ヶ月かかり、平均未納家賃は9.7ヶ月分です。他に強制執行経費が平均50.7万円発生しています。
『裁判所が、判決で連帯保証人の負担とした額』
判決によって、裁判所が連帯保証人に負担を命じた支払額についての調査です。
それによると、
連帯保証人の負担額は、家賃の平均13.2ヶ月分とのことです。
この負担額には、未納家賃のほかに、原状回復費用、損害賠償額も含まれています。
まとめ
国土交通省の「極度額に関する参考資料」によると、家賃保証会社への調査では、回収できなかった額は、平均4~6ヶ月分。管理会社への調査では、平均未納家賃は9.4ヶ月分。裁判所が連帯保証人の負担としたのは、平均13.2ヶ月分です。
実際に滞納が発生し強制執行まで進んだ場合には、明渡訴訟に至るまでの未納家賃3ヵ月分+明渡訴訟中の未納期間6ヶ月分+原状回復費用+損害賠償費用が貸主の損害額となり、借主と連帯保証人に請求することになります。
そうすると、貸主としては、最低でも家賃10ヶ月分以上を連帯保証人の極度額としておきたいところですね。他の管理会社に聞いても、10ヶ月分から契約期間の24ヶ月分とまちまちでした。
あまりにも高額になりますと、公序良俗違反として無効になってしまう可能性もあるようですし、最大でも24ヶ月分を超えない額にしておいた方がいいのではないでしょうか。
そもそも、『請求できる』ということと、『支払ってもらえる』ということは別問題です。極度額を定めたとしても、支払い能力がなければ、支払ってはもらえません(契約時には支払い能力があっても、年数の経過とともに状況が変化することもあります)。ですので、家賃保証会社も利用しつつ、家賃によって、10~24ヶ月の幅で設定するのがいいのかなと思います。
家賃の〇ヶ月分と書きましたが、契約書には、誤認しないよう金額を記載する方が良いようです。
それぞれの調査方法の詳細は、国土交通省のホームページの「極度額に関する参考資料」をご参照ください。
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