長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
賃貸経営を行っていく上で、所有しているアパートやマンションの空室率を把握しておくことは、重要です。
キャッシュフローツリーを見ても、空室率は、NOI(営業純利益)に大きな影響があることが分かります。
しかしながら、ひと言で空室率といっても、計算方法の異なる3つの空室率があることをご存知でしょうか。このことを知らずに、目にした数字を単純にキャッシュフローツリーに当てはめてみると、経営計画に大きな狂いが生じてしまうこともあります。
用途に応じて、適切な空室率を選択できるよう、今回は、3つの空室率それぞれの計算の仕方と用途別の向き不向きについてお伝えします。
時点空室率
その時点の戸数を基準にした空室率です。分母は、「賃貸可能戸数」、分子は「空室戸数」で、調査しやすく、主にポータルサイトの空室率調査や、管理会社が発表する空室率に利用されます。
計算式は、以下の通りです。
賃貸可能戸数とは、すぐにでも賃貸借契約が可能な部屋の数をいいます。原状回復工事中の期間中の部屋を賃貸可能戸数に含めるかどうかについては、様々な意見や考え方がありますが、原状回復工事は、リノベーション大規模修繕工事のような、バリューアップにつながる工事ではなく、賃貸経営を継続するための必要な工事と考えると、賃貸可能戸数に含めることが妥当ではないでしょうか。
・計算しやすく、市場調査や管理会社の空室率調査に利用される。
・その時点での空室率のため、流れが把握できない。
・原状回復工事にかかる空室日数、退去から入居までにかかる空室日数も捉えた空室率は把握できない。
・戸数が少ないと極端な数字が出やすく、物件個別の分析や収支計算には向かない。
『戸数』をベースにした空室率です。
稼働空室率
1年間の建物全体の稼働日数に対しての、空室日数の割合です。一定の期間(主に1年)の実績による空室率のため、翌期の収支計算を予測する時の数値として利用され、キャッシュフローツリーを作成する際に利用されることの多い空室率です。
分母は「賃貸戸数×365日」分子は「空室日数」で、計算式は、以下のようになります。
10室中全体の空室日数が1ヶ月(30日)の場合
30日 ÷(365日 × 10室)× 100 = 0.82%
10室中全体の空室日数が1ヶ月(30日)の場合
90日 ÷(365日 × 10室)× 100 = 2.46%
となります。
収支計算をする際に一般的に用いられる「空室率5%」の数字を、総戸数10戸のアパートにあてはめてみると、365日×10戸×5%=182.5日が空室日数となります。「空室率5%」で収支予測を立てるならば、建物全体では、年間約182日までの空室は、許容範囲ということになります。
・オーナーが賃貸経営状況を把握しやすい
・一定期間の実績に基づく数値のため、物件個別の収支予測を立てる場合に向いている
・原状回復工事にかかる空室日数、退去から入居までにかかる空室日数も含んだ空室率が把握できる
『日数』をベースにした空室率です。
※フリーレントを付けて入居してもらった場合では、賃料が発生していなくても、空室日数としてはカウントされません。この場合、キャッシュフローツリーでは、フリーレント期間中の賃料については未回収損に含み計算します。
想定賃料空室率
想定賃料を基準にした空室率です。空室だけでなく、未回収損・滞納損やフリーレント期間中の賃料も、空室と見做し算出します。
計算式は、以下のようになります。
具体的に考えてみましょう。部屋数が10戸ある一棟アパートで、それぞれ月7万円で賃貸できると想定していたとします。このアパートでは、1年間満室であったら、7万円×10戸×12ヶ月=840万円の年間の家賃収入があるはずです。ところが実際には、2戸だけ6万円で貸すことになり、実際の家賃収入は(7万円×8戸+6万円×2戸)×12ヶ月=816万円となりました。
この場合の空室率は以下のように計算されます。
空室率=(840万円-816万円)÷ 840万円 × 100 = 2.86%
滞納やフリーレントの発生による逸失賃料や、想定賃料と成約賃料との差も空室としてみなしますので、より細かい収支計画を立てる際に向いていますが、計算のベースとなる想定年間収入は、築年数の経過や建物の状態によっても変わりますので、定期的に見直しが必要です。
・一定期間の実績に基づく数値のため、物件個別の収支予測を立てる場合に向いている
・原状回復工事にかかった空室期間、退去から入居までにかかった空室期間により逸失した賃料収入だけでなく、滞納や、想定賃料と成約賃料との差異による逸失した賃料収入も含んだ空室率が把握できる
・想定賃料は定期的に見直しが必要
『円』をベースにした空室率です。
まとめ
空室率のそれぞれの計算式と特徴について、ご理解いただけたでしょうか。空室率について調べる際には、単に数字の比較をするのではなく、どの指標を基準にして計算された数字なのかも確認してみると良いでしょう。
空室率は一般管理かサブリース管理かを選択する際の指標にも利用できます。
サブリース賃料は、「想定賃料に対して80~90%」というように決められます。ということは、想定賃料空室率が、20%~10%で設定されているということです。
想定賃料空室率に含まれる逸失賃料のうち滞納によるものは、保証会社を利用することでゼロにできます。
どちらか悩んだ場合、特にサブリース管理中のアパートで、一般管理への変更も含んだ管理替えを検討する場合には、フリーレントの有効性を調査した上で、稼働空室率+一般管理手数料5%(別途消費税)が、成約賃料-サブリース賃料を下回れば一般管理。上回ればサブリースの方がお得というように判断できます。
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