長く賃貸管理の現場を経験してきました。自身もオーナーとして不動産投資や賃貸経営を行っています。その経験を共有し、皆様の賃貸経営にお役立ていただければと思い本ブログを運営しています。1976年生まれ、2人の娘の父です。
【保有資格】CPM®(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/相続アドバイザー
賃貸経営は、賃料収入に直結する入居募集について目がいきがちですが、賃貸借契約書について気にする貸主は、それほど多くはないのではないでしょうか。
契約書には、「契約内容の確認」「紛争を予防」「紛争に発展した場合の証拠」の機能があり、入居中や退去時における、貸主・借主のお互いの義務やルールを明文化することで、トラブルが発生した時の、円滑に解決するためのマニュアルにもなります。
賃貸借契約は、定期借家契約であったり、お互いの合意による変更がない限り、入居時に取り交わした最初の契約書に基づいて、更新を繰り返していくのが一般的です。ですから、入居の際に取り交わす契約書の内容に、その後の期間も縛られていくことになります。
更新時には、更新料として「新賃料の1ヶ月分相当額」を見込んで契約をしている貸主がほとんどでしょう。ですが、入居の際に取り交わす契約書の更新の条文の書き方次第では、更新料が請求できなくなってしまうことがあることはご存知でしょうか。
あの時こうしておけばよかったとならないよう、今回は、意外と見落としがちな「更新」についてお伝えします。
法定更新と合意更新について
更新には、合意更新と法定更新とがあります。
合意更新
合意更新とは、「協議での更新」または「自動更新」をいい、貸主と借主双方の合意に基づいて行われる更新です。「期間満了の〇日前までに解約の申入れがない場合は、賃料や期間等従前と同一条件にて、自動的に更新する。」などの契約上の定めに基づく更新です。
法定更新
法定更新とは、借地借家法に基づく更新で、貸主・借主に更新の合意がない場合に認められます。
・貸主もしくは借主が、期間満了の1年から6ヶ月前までの間に、相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったとき
・通知をしても、期間満了後も借主が住み続け、貸主が遅滞なく異議を述べなかったとき
に、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、契約期間の定めがなくなるというものです。
更新料の請求ができなくなる更新とは
更新料の請求ができなくなるのは、法定更新になってしまった場合です。
更新料は、賃貸借契約を継続するための対価としての性質もあるので、貸主が6ヶ月の猶予期間を定めて、いつでも解約の申し入れができる法定更新の場合は、更新料の支払い義務は発生しないでしょうということです。
もし、契約書に「本契約更新時に、借主は貸主に対し、更新料として1ヶ月分相当額を支払うものとする」と書かれていても、法定更新の場合は、借主に支払い義務は発生しないことになります。
平成23年7月15日の更新料裁判における最高裁判所・判決要旨
更新料の性質について
更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払いによって賃借人が円満に物件の使用が継続できることからすると、更新料は、一般に賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。
では、合意更新の記載がある場合は、必ず支払ってもらえるかというとそうではありません。
賃貸借契約書の雛形でよく利用されている以下の書き方では、1年前から6ヶ月前までに貸主が更新をしない旨の通知をしなかった場合や、合意が得られずに契約期間の満了を迎えて、貸主が異議を申し立てなかったり、更新拒絶の正当事由がない場合には、法定更新になってしまいます。
(契約期間)
甲及び乙は、協議の上、本契約を更新することができる。
更新料の支払いでトラブルを軽減するためには
更新料の支払いに関してトラブルを回避するためには、そもそも法定更新になりにくいような契約書にしておくことです。
貸主もしくは借主からの何らの申し出がない場合には、同一条件により〇年間更新されるといった自動更新の条文や、法定更新や合意更新を問わず、〇年に一度、〇〇〇円の更新料の支払いが発生するといった、期間や金額を定めた特約条文を盛り込んでおくとよいでしょう。
賃貸経営には、クレームやトラブルはつきものです。クレームやトラブルによる被害を最小限に抑えるには、契約書類を整えることも効果的ですが、専門知識が必要とされることもあってか、管理会社のひな型をそのまま利用してしまっていることが多いのではないでしょうか。
全てを確認することは難しくても、発生が考えられるトラブルを一旦書き出してみて、契約書のどの条文が対応しているのか、一度は確認してみることも、ご自身の資産を守ることにもつながります。
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